夜話に云く、故建仁寺僧正の伝をば顕兼の中納言入道書いたるなり。その時辞する言に云く、「儒者に書かせらるべきなり。その故は、儒者はもとより身を忘れて、幼きより長るまで学問を本とす。故に書いたるものに誤り無きなり。只人は、身の出仕交衆を本として、かたはら事に学問をするあいだ、自らよき人あれども、文筆の道にも誤り出来るなり。」と。これを思うに、昔の人は外典の学問も身を忘れて学するなり。
また云く、故公胤僧正云く、「道心と云うは、一念三千の法門なんどを胸中に学し入れて持ったるを道心と云うなり。なにとなく笠を頚に懸けて迷いありくをば、天狗魔縁の行と云うなり。」と。
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『正法眼蔵随聞記』