【仏教用語/人物集 索引】

『伝光録』第十四祖。龍樹尊者。

投稿日:2004年1月12日 更新日:

【本則】

第十四祖。龍樹尊者。因十三祖赴龍王請。受如意珠。師問曰。此珠世中至宝也。是有相耶。無相耶。祖曰。汝只知有相無相。不知此珠非有相非無相。亦未知此珠非珠。師聞深悟。

【機縁】

師者西天竺国人也。龍猛亦名龍勝。十三祖当時受度伝法。至西印土。彼有太子。名雲自在。仰尊者名請於宮中供養。尊者曰。如来有教。沙門不得親近国王大臣權勢之家。太子曰。今我国城之北有大山焉。山中有一石窟。師可禅。寂于此否。尊者曰。諾。即入彼山行数里。逢一大蟒。尊者直進不顧。蟒来遂盤繞尊者身。尊者因与授三帰依。蟒聴訖而去。尊者将至石窟。復有一老人。素服而出。合掌問訊。尊者曰。汝何所止。老人答曰。我昔嘗為比丘。多楽寂静。隠居山林。有初学比丘。数来請益。而我煩於応答。起瞋恨想。命終墮為蟒身。住是窟中。今已千載。適遇尊者。獲聞戒法。故来謝耳。尊者問曰。此山更有何人居止。曰。此北去十里有大樹。蔭覆五百大龍。其樹王名龍樹。常為龍衆説法。我亦聴受耳。尊者遂与徒衆詣彼。龍樹出迎尊者曰。深山孤寂龍蟒所居。大聖至尊何枉神足。尊者曰。吾非至尊来訪賢者。龍樹黙念曰。此師得決定性明道眼否。是大聖継真乗否。尊者触曰。汝雖心語。吾已意知。但弁出家。何慮吾触聖不聖。龍樹聞已。悔謝出家。尊者即与度触脱。及五百龍衆倶受具戒。然しより尊者に触したがひて四年をふるに。十三祖龍王の触請にをもむきしに。如意珠をたてまつる。触師問曰。此珠世中至宝也乃至師聞深悟す。触終に第十四祖に列す。

【拈提】

夫れ龍樹は異道を触学し神通を具す。常に龍宮に行。七仏の経触書を見。その題目を見てすなはち経の心触をしり。よのねつに五百の龍を化す。いは触ゆる難陀龍王・跋難陀龍王等は皆これ等触覚の菩薩也。悉く前仏の付嘱をうけ。諸経触を安置したてまつる。今大師釈尊の経教。触人天すてに化縁つきん時も。悉く龍宮に触をさまるべし。如是大威神ありて。尋常大触龍王と問答往来すといへども。これ真実触の道人にあらず。只是外道を学する耳也。触一度十三祖に帰せしよりこのかた。まさ触に是大明眼也。然るを人人皆おもはく。龍触樹は只是祖門の十四祖なるのみにあら触す。またこれ諸家の祖師たる故に。真言も触是をもて本祖とす。天台も是をもて根本触とす。陰陽蠶養等も是もて根本とす。これ触みなむかし諸芸を習しかども。祖位に列触してのちは捨られし。諸芸弟子われも龍触樹は即本祖なりといへり。是すなはち龍樹なりとおもはん。正邪を混乱して。玉石を弁ぜざる。魔黨畜類なり。たヾ龍樹の仏法。迦那提婆のみすなはち正伝なり。余は皆すてられし諸宗なりと。今の因縁をもてしるべし。五百の龍衆を接化すといへども。猶迦毘摩羅尊者至るとき。出てむかひて礼拝し。こヽろみんとす。尊者しばらく隠密して正宗をあらはさず。龍樹黙念じて曰。是真乗をつげる大聖なりやと。心中にはかりみんとす。祖曰く。但弁出家。何慮吾之不聖。といひしかば。龍樹慚愧して。十三祖につぎ来る。今の因縁をもて明むべし。曰く此珠世中の至宝なり。是珠有相なりや。無相なりや。実に龍樹さきよりしれり。是有相なりとやせん。無相なりとやせん。頗る有無の所見を動執するなり。これによりて祖示云云実にたとひ世間の珠なりといへども。真実を論せん時。これ有相無相にあらず。只これ珠なり。いはんや力士の額にかかる珠。輪王の髻に包みし珠。龍王の珠。酔人衣裏の珠。悉く他の所見にわたらず。有相無相とも弁じがたし。然れども適来の珠は。悉く世間の珠也。全く是道中の至宝にあらず。何況や此の珠又珠にあらざることをしることあたはず。実に精細にすべし。玄沙曰。全体是珠。令誰知。又曰。尽十方世界。是一顆の明珠と。実に是れ人天の所見をもて弁ずべきにあらず。然れともたとひ世間の珠なるも。全く外より来るにあらず。悉く人人の自心より発現し来る。故に天帝釈は是を如意珠宝とも。摩尼珠宝とも受用し来る。病ある時も此の珠をおけば病すなはちいゆ。憂ある時も此の珠を戴だけば憂おのづから除く。神通変現を現することもこの珠による。輪王七宝中に摩尼宝珠あり。一切の珍宝悉くこれより出生す。受用するに無量なり。かくのごとく人天の果報にしたがひて勝劣あり。差別あり。人間の如意珠とは米粒をもなづけたり。是れを珠宝とす。是れ天上の珠に比するに造作建立とす。然も是を呼て珠とす。又如来の舍利仏法滅する時如意宝珠となり。一切をふらし。米粒ともなりて衆生をたすくべし。たとひ仏身と現し。米粒と現じ。万法とあらはれ。一顆と顯はるるとも。自心あらはれて五尺の身となり。三頭の形となり。被毛戴角の形となり。森羅万像品品となる。然も即すべからく彼の心珠を弁ずべし。昔の比丘の如く寂静をねがひ。山林に隠居することなかれ。実に是前来も如是未得道なるあやまりあり。近来も如此未得道なる錯りあり。猶諸人と肩をまじへ参来参去すること。閑静ならざる故に。独り山林に居して。しづかに坐禅行道せんと。かくのごとくいひて。ををく山谷に隠居し。みだりに修錬する類。ををくはもて邪路に趣き来る。ゆへいかんとなれば。其の真実をしらず。徒に自己を先とするゆへなり。又曰。大梅常禅師も鉄塔をいただき。松煙の中に坐す。潙山大円禅師も虎狼をともとして。雲霧の底に修す。我等もかくの如く修習すべしと。実に笑ひぬべし。古人悉く得道して。正師に印記を受け。しばらく道業を純熟せしめん為に。機縁をまつ間た。如是修せしなりと可知。大梅は馬祖の正印を受け。潙山は百丈の伝付をゑし後なり。愚見のおよぶところにあらす。隠山羅山等の古人。いづれも未得道の先に独住せしことなし。徳行を一時にふるひ。名を末代に留る。明眼の大聖得道の真人なり。徒に参ずべきを参ぜず。至るべきに至らず。山谷に居して獼猴の如くならん。もつともこれ無道心の甚しきなり。若し道眼清明ならず。自調修錬する者は声聞円覚となり。虚く敗種の者たらん。いはゆる敗種といふは。やけたるたねなり。仏種を断ず。然るに諸人者子細に叢林に修錬し。長時に知識に参尋して。大事悉く明め。自己まさに明弁しをはり。其後しはらく根を深くし。蔕をかたくせんことは。曩祖の付嘱なりといふとも。殊に此一門の中。永平開山独住を誡めらる。是れ人を邪路に趣むかせじとなり。殊に先師瑩祖初随侍孤雲祖。故曰先師。末又在之二代の示曰。我が弟子は独住すべからず。たとひ得道せりとも叢林に修錬すべし。況やまた参学の輩は一向独住すべからず。是の制に背せん者は吾門葉にあらずと。又円悟禅師曰。古人得旨之後。向深山茆茨石室。折脚鐺兒煮飯喫。十年二十年大忘人世。永謝塵寰。今時不敢望。又黄龍南曰。自ら道を守り。山林に在て老かがまらんより。何そ衆を叢林に引入するにはしかん。近代諸大宗匠みな独住を好まず。況や人の根器ことごとく昔の人よりも劣なり。たた叢林にありて修錬弁道すべし。古人も如此。猶用心疎なるによりて。猥りに寂静を好みしかば。新学の比丘来て請益せしに。可答不答。瞋恚を発しき。実にしりぬ。其の身心未調。知識に離れ。閑居独住せんこと。たとひ龍樹の如く説法すといへども。唯是業報類なるべし。諸人厚植善根なるによりて。正しく如来の正法を聞えたり。いはゆる不親近国王大臣と。独住閑居を好楽せず。ただ道業を精進し。專ら法源を透脱すべし。是れまさに如来の真口訣なり。今日適来の因縁を挙揚するにすなはち卑語あり。要聞麼。

【頒古】

孤光霊廓常無昧 如意摩尼分照来。

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