【仏教用語/人物集 索引】

『正法眼蔵随聞記』86、俗人の云く、財はよく身を害す

投稿日:1235年6月11日 更新日:

一日示して云く、俗人の云く、「財はよく身を害す。昔もこれあり、今もこれあり。」と。
言う心は、昔一人の俗人あり。一人の美女をもてり。威勢ある人これを請う。かの夫、是れを惜しむ。終に軍を興して囲めり。彼のいえ既に奪い取られんとする時、かの夫云く、「汝が為に命を失うべし。」
かの女云く、「我れ汝が為に命を失わん。」と云って、高桜より落ちて死にぬ。
その後、かの夫うちもらされて、命遁れし時いいし言なり。

昔、賢人、州吏として国を行なう。時に息男あり、父を拝してさる時、一疋の縑を与う。
息の云く、「君、高亮なり。この縑いづくよりか得たる。」
父云く、「俸禄のあまりあり。」
息かえりて皇帝に参らす。帝はなはだその賢を感ず。
かの息男申さく、「父なお名をかくす。我れはなお名をあらわす。父の賢すぐれたり。」と。

この心は、一疋の縑は是れ少分なれど賢人は私用せざる事、聞えたり。また、まことの賢人はなお賢の名をかくして、俸禄なれば使用するよしを云う。
俗人なお然り。学道の衲子、私を存ずる事なかれ。またまことの道を好まば、道者の名をかくすべきなり。

また云く、仙人ありき。
ある人問うて云く、「何んがして仙を得ん。」
仙の云く、「仙を得んと思わば道を好むべし。」と。
然あれば、学人仏祖を得んと思わば、すべからく祖道を好むべし。

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『正法眼蔵随聞記』

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