【仏教用語/人物集 索引】

『正法眼蔵随聞記』26、昔、智覚禅師と云し人

投稿日:1235年6月11日 更新日:

示して云く、昔、智覚禅師と云し人の発心出家の事、この師は初めは官人なり。富に誇るに正直の賢人なり。有る時、国司たりし時、官銭を盗んで施行す。傍の人、是れを官奏す。帝、聴いて大いに驚きあやしむ。諸臣皆あやしむ。罪過すでに軽からず。死罪に行なはるべしと定まりぬ。

爰に帝、議して云く、「この臣は才人なり、賢者なり。今ことさらにこの罪を犯す、もし深き心有らんか。もし頚を斬らん時、悲しみ愁たる気色あらば、速やかに斬るべし。もしその気色なくんば、定めて深き心あり。斬るべからず。」

勅使ひきさりて斬らんと欲する時、少しも愁の気色なし。返りて喜ぶ気色あり。
自ら云く、「今生の命は一切衆生に施す。」と。
使、驚きあやしんで返り奏聞す。
帝云く、「然り。定めて深き心有ん。この事あるべしと兼ねて是れを知れり。」と。よってその故を問う。

師云く、「官を辞して命を捨て、施を行じて衆生に縁を結び、生を仏家にうけて一向に仏道を行ぜんと思う。」と。
帝、是れを感じて許して出家せしむ。よって延寿と名を賜ひき。殺すべきを、是を留むる故なり。

今の衲子も是れほどの心を一度発すべきなり。命を軽くし生を憐れむ心深くして、身を仏制に任せんと思う心を発すべし。もし前よりこの心一念も有らば、失はじと保つべし。これほどの心一度おこさずして、仏法を悟る事はあるべからず。

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『正法眼蔵随聞記』

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