夜話に云く、昔、魯の仲連と云う将軍ありて、平原君が国にあって能く朝敵を平らぐ。平原君賞して数多の金銀等を与えしかば、魯の仲連辞して云く、「ただ将軍の道なれば敵を討つ能を成すのみ。賞を得て物を取らんとにはあらず。」と謂って、敢て取らずと言う。魯仲連が廉直とて名誉の事なり。
俗なお賢なるは、我れその人としてその道の能を成すばかりなり。代わりを得んと思わず。学人の用心も是のごとくなるべし。仏道に入りては仏法の為に諸事を行じて、代りに所得あらんと思うべからず。内外の諸教に、皆無所得なれとのみ進むるなり。心を取る。
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『正法眼蔵随聞記』
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