【仏教用語/人物集 索引】

『正法眼蔵随聞記』12、道者の用心

投稿日:1235年6月12日 更新日:

示して云く、道者の用心、常の人に殊なる事あり。

故建仁寺の僧正在世の時、寺絶食す。ある時一人の檀那請じて絹一疋施す。僧正悦びて自ら取って懐中して、人にも持たせずして、寺に返って知事に与へて云く、「明旦の浄粥等に作さるべし。」

然るに俗人のもとより所望して云く、「恥がましき事有って絹二三疋入る事あり。少々にてもあらば給はるべき」よしを申す。僧正則ち先の絹を取り返して即ち与へぬ。時にこの知事の僧も衆僧も思いの外に不審す。

後に僧正自ら云く、「各々、僻事にぞ思わるらん。しかれども、我れ思わくは、衆僧面々仏道の志ありて集れり。一日絶食して餓死するとも、苦しかるべからず。俗の世に交われるが、差し当たって事闕らん苦悩を助けたらんは、各々の為にも、一日の食を去って人の苦を息めたらんは、利益すぐれたるべし。」と。

道者の案じ入れたる事、かくの如し。

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『正法眼蔵随聞記』

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