【 第3章 】
10、命を捨てる決意
1 さて尊師は早朝に内衣を着け、外衣と鉢とをたずさえて、托鉢のためにヴァイシャリ市に入って行った。
托鉢のためにヴァイシャリを歩んで、托鉢行から戻って、食事を済ませた後で若き人アーナンダに告げた。
「アーナンダよ。坐具を持って行け。わたしはチャーパーラ霊樹のところに行こう。昼間の休息のために。」
「かしこまりました」と、若き人アーナンダは尊師に答えて、坐具をたずさえて、尊師の後につき従って着いて行った。
(2004年 管理人撮影/菩提樹)
2 そこで尊師はチャーパーラ霊樹のもとに赴いた。赴いてから、あらかじめ設けられていた座席に坐した。若き人アーナンダは尊師に敬礼して、一方に坐した。一方に坐した若き人アーナンダに、尊師はこのように言われた。
「アーナンダよ。ヴァイシャリは楽しい。ウデーナ霊樹の地は楽しい。ゴータマカ霊樹の地は楽しい。七つのマンゴー霊樹の地は楽しい。バフプッタ霊樹の地は楽しい。サーランダダ霊樹の地は楽しい。チャーパーラ霊樹の地は楽しい。」
3 アーナンダよ。いかなる人であろうとも、四つの不思議な霊力(四神足)を修し、大いに修し、軛(くびき)を結び付けられた車のように修し、家の礎(いしずえ)のようにしっかりと堅固にし、実行し、完全に積み重ね、見事に成し遂げた人は、もしも望むならば、寿命のある限りこの世に留まるであろうし、あるいはそれよりも長い間でも留まることが出来るであろう。
アーナンダよ。修行を完成した人(如来)は、四つの不思議な霊力(四神足)を修し、大いに修し、軛(くびき)を結び付けられた車のように修し、家の礎(いしずえ)のようにしっかりと堅固にし、実行し、完全に積み重ね、見事に成し遂げた。彼は、もしも望むならば、寿命のある限りこの世に留まるであろうし、あるいはそれよりも長い間でも留まることが出来るであろう」と。
4 こういうわけであったけれども、若き人アーナンダは、尊師がこのようにあらわにほのめかされ、あらわに明示されたのに、洞察することができなくて、尊師に対して、「尊い方よ。尊師はどうか寿命のある限り、この世に留まってください。幸いな方(ブッダ)は、どうか寿命のある限り、この世に留まってください。多くの人々の利益のために、多くの人々の幸福のために、世間の人々を憐れむために、神々と人々との利益のために、幸福のために」と言って尊師に懇請することをしなかった。
それは、彼の心が悪魔にとりつかれていたからである。
5 再び尊師は・・・三度も尊師は若き人アーナンダに告げられた。
「アーナンダよ。ヴァイシャリは楽しい。ウデーナ霊樹の地は楽しい。ゴータマカ霊樹の地は楽しい。七つのマンゴー霊樹の地は楽しい。バフプッタ霊樹の地は楽しい。サーランダダ霊樹の地は楽しい。チャーパーラ霊樹の地は楽しい。」
アーナンダよ。いかなる人であろうとも、四つの不思議な霊力(四神足)を修し、大いに修し、軛(くびき)を結び付けられた車のように修し、家の礎(いしずえ)のようにしっかりと堅固にし、実行し、完全に積み重ね、見事に成し遂げた人は、もしも望むならば、寿命のある限りこの世に留まるであろうし、あるいはそれよりも長い間でも留まることが出来るであろう。
アーナンダよ。修行を完成した人(如来)は、四つの不思議な霊力(四神足)を修し、大いに修し、軛(くびき)を結び付けられた車のように修し、家の礎(いしずえ)のようにしっかりと堅固にし、実行し、完全に積み重ね、見事に成し遂げた。彼は、もしも望むならば、寿命のある限りこの世に留まるであろうし、あるいはそれよりも長い間でも留まることが出来るであろう」と。
こういうわけであったけれども、若き人アーナンダは、尊師がこのようにあらわにほのめかされ、あらわに明示されたのに、洞察することができなくて、尊師に対して、「尊い方よ。尊師はどうか寿命のある限り、この世に留まってください。幸いな方(ブッダ)は、どうか寿命のある限り、この世に留まってください。多くの人々の利益のために、多くの人々の幸福のために、世間の人h々を憐れむために、神々と人々との利益のために、幸福のために」と言って尊師に懇請することをしなかった。
それは、彼の心が悪魔にとりつかれていたからである。
6 そこで尊師は、若き人アーナンダに告げられた。「アーナンダよ。では、あなたは随意に出かけなさい」と。
「かしこまりました」と、若き人アーナンダは尊師に答えて、坐から起こって、尊師に敬礼して、右肩を向けて巡って、近くにある一本の樹の根元に坐った。
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※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。
なお、底本としてパーリ語経典長部の『大般涅槃経』(マハー・パリニッバーナ・スッタンタ)を使用していますが、学問的な正確性を追求する場合、参考文献である『「ブッダ最後の旅」中村元訳 岩波文庫』を読むようおすすめします。なお、章題/節題は比較しやすいよう同じにしました。
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