山僧天童に在りし時、本府の用典座職に充てりき。予因みに斎罷んで東廊を過ぎ、超然斎に赴くの路次、典座仏殿前に在って苔を晒す。手に竹杖を携え、頭に片笠無し。天日熱し、地甎熱す。汗流徘徊すれども、力を励して苔を晒す。稍苦辛を見る。背骨弓の如く、竜眉鶴に似たり。
山僧近前して、便ち典座の法寿を問う。
座云く、「六十八歳。」
山僧云く、「如何ぞ行者人工を使わざる。」
座云く、「佗は是れ吾にあらず。」
山僧云く、「老人家如法なり。天日且つ恁くのごとくに熱す。如何ぞ恁地なる。」
座云く、「更に何れの時をか待たん。」と。
山僧更ち休す。
廊を歩する脚下、潜かにこの職の機要たることを覚う。
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1、職を勤める姿が仏の姿
2、心が整えば味も整う
3、米を洗うことも修行のうち
4、心を他のことに移さない
5、菜っ葉も伽藍も上下なし
6、よし悪しの隔てなく授かる心
7、一茎菜を拈じて、丈六身と作し
8、ことに見合った細かい心配り
9、食べることも仏法を行じていること
10、他人のしたことは自分のしたことにならない
11、よく自分のことを勤める
12、学問も修行も天地のいのちに気づくこと
13、まず心をこめて行ずること
14、修行は日々の足下にある
15、すべて行ずることが仏事
16、自他の境をとりはずす
17、ただ自然に変わっていくだけ
18、自然のまま喜びの心で引き受ける
19、親心は無償の心
20、天地の寸法は隔たりがない
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