【仏教用語/人物集 索引】

スッタニパータ【第4 八つの詩句の章】12、並ぶ応答 ─ 小篇

投稿日:0202年5月28日 更新日:

878 世の学者たちはめいめいの見解に固執して、互いに異なった執見をいだいて争い、みずから真理への熟達者であると称して、様々に論ずる。「このように知る人は真理を知っている。これを非難する人はまだ不完全な人である」と。

879 彼らはこのように異なった執見をいだいて論争し、「論敵は愚者であって、真理に達した人でない」と言う。これらの人々はみな「自分こそ真理に達した人である」と語っているが、これらの内で、どの説が真理なのであろうか?

880 もしも論敵の教えを承認しない人が愚者であって、低級な者であって、智慧の劣った者であるならば、これらの人々は全て各自の偏見を固執しているのであるから、彼らは全て愚者であり、ごく智慧の劣った者であるということになる。

881 またもし自分の見解によって清らかとなり、自分の見解によって、真理に達した人、聡明な人となるのであるのならば、彼らの内には知性のない者は誰もいないことになる。彼らの見解はその点で等しく完全であるから。

882 諸々の愚者が相互に他人に対して言う言葉を聞いて、わたくしは「これは真実である」とは説かない。彼らは各自の見解を真実であるとみなしたのだ。それ故に彼らは他人を「愚者」であると決めつけるのである。

883 ある人々が「真理である、真実である」と言うところのその見解をば、他の人々が「虚偽である、虚妄である」と言う。このように彼らは異なった執見をいだいて論争する。何故に諸々の道の人は同一の事を語らないのであろうか?

884 真実は一つであって、第二のものは存在しない。その真理を知った人は、争うことがない。彼らはめいめい異なった真理をほめたたえあっている。それ故に諸々の道の人は同一の事を語らないのである。

885 みずから真理に達した人であると自称して語る論者たちは、何故に種々異なった真理を説くのであろうか?彼は多くの種々異なった真理を他人から聞いたのであるか?あるいはまた彼らは自分の思索に従っているのであろうか?

886 世の中には、多くの異なった真理が永久に存在しているのではない。ただ永久のものだと想像しているだけである。彼らは、諸々の偏見にもとづいて思索考研を行って、「我が説は真理である」「他人の説は虚妄である」と二つのことを説いているのである。

887 偏見や伝承の学問や戒律や誓いや思想や、これらに依存して他の説を蔑視し、自己の学説の断定的結論に立って喜びながら、「反対者は愚人である、無能な奴だ」という。

888 反対者を愚者であると見なすと共に、自己を真理に達した人であるという。彼はみずから自分を真理に達した人であると称しながら、他人を蔑視し、そのように語る。

889 彼は過った妄見を以て満たされ、驕慢によって狂い、自分は完全なものであると思いなし、みずからの心の内では自分を賢者だと自認している。彼のその見解は、彼によればそのように完全なものだからである。

890 もしも、他人が自分を「愚劣だ」と呼ぶが故に、愚劣となるのであれば、その呼ぶ人自身は相手と共に愚劣な者となる。また、もしも自分でヴェーダの達人・賢者と称しているのであれば、諸々の、道の人の内には愚者は一人も存在しないことになる。

891 「この我が説以外の他の教えを説き伝える人々は、清浄に背き、不完全な人である」と、一般の諸々の異説の徒はこのように様々に説く。彼は自己の偏見に溺れて汚れに染まっているからである。

892 ここ(我が説)にのみ清浄があると説き、他の諸々の教えには清浄がないと言う。このように一般の諸々の異説の徒は様々に執著し、かの自分の道を堅く守って論ずる。

893 自分の道を堅く保って論じているが、ここに他の何びとを愚者であると見ることができようぞ。他の説を、「愚者である」、「不浄の教えである」と説くならば、彼はみずから確執をもたらすであろう。

894 一方的に決定した立場に立ってみずから考え量りつつ、さらに彼は世の中で論争をなすに至る。一切の哲学的断定を捨てたならば、人は世の中で確執を起こすことがない。

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※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。

なお、底本としてパーリ語経典の『スッタニパータ』を使用していますが、学問的な正確性を追求する場合、参考文献である『「ブッダの言葉」中村元訳 岩波文庫』を読むようおすすめします。なお、章題/節題は比較しやすいよう同じにしました。

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