【仏教用語/人物集 索引】

スッタニパータ【第4 八つの詩句の章】9、マーガンディヤ

投稿日:0202年5月28日 更新日:

835 ブッダ)は語った、「我は昔、悟りを開こうとした時に、愛執と嫌悪と貪欲という三人の悪女を見ても、彼らと婬欲の交わりをしたいという欲望さえも起らなかった。糞尿に満ちたこの女がそもそも何者なのだろう。わたくしはそれに足でさえも触れたくないのだ。」

836 マーガンディヤが言った、「もしもあなたが、多くの王者が求めた女、このような宝が欲しくないならば、あなたはどのような見解を、どのような戒律・道徳・生活法を、またどのような生存状態に生まれ変わることを説くのですか?」

837 が答えた、「マーガンディヤよ。「わたくしはこのことを説く」ということがわたくしにはない。諸々の事物に対する執著を執著であると確かに知って、諸々の偏見における過誤を見て、固執することなく、省察しつつ内心の安らぎをわたくしは見た。」

838 マーガンディヤが言った、「聖者さま。あなたは考えて構成された偏見の定説を固執することなしに、内心の安らぎということをお説きになりますが、そのことわりを諸々の賢人はどのように説いておられるのでしょうか?」

839 は答えた、「マーガンディヤよ。「教義によって、学問によって、戒律や道徳によって清らかになることが出来る」とは私は説かない。「教義がなくても、学問がなくても、戒律や道徳を守らなくても、清らかになることが出来る」とも説かない。それらを捨て去って、固執することなく、こだわることなく、平安であって、迷いの生存を願ってはならぬ。これが内心の平安である。」

840 マーガンディヤが言った、『もしも、「教義によっても、学問によっても、知識によっても、戒律や道徳によっても清らかになることが出来ない」と説き、また「教義がなくても、学問がなくても、知識がなくても、戒律や道徳を守らなくても、清らかになることが出来ない」と説くのであれば、それはばかばしい教えであるとわたくしは考えます。「教義によって清らかになることが出来る」とある人々は考えます。』

841 は答えた、「マーガンディヤよ。あなたは自分の教義にもとづいて尋ね求めるものだから、執著した事柄について迷妄に陥ったのです。あなたはこの内心の平安について微かな想いをさえもいだいていない。だから、あなたはわたしの説を「ばかばかしい」とみなすのです。

842 「等しい」とか「すぐれている」とか、あるいは「劣っている」とか考える人、彼らはその思いによって論争するであろう。しかしそれらの三種(欲想<欲望の思い>、恚想<敵意>、害想<害意>の3つ)に関して動揺しない人、彼には「等しい」とか、「すぐれている」とか、あるいは「劣っている」とかいう思いは存在しない。

843 そのバラモンはどうして「我が説は真実である」と論ずるであろうか。また彼らは「あなたの説は虚偽である」といって誰と論争するであろうか?「等しい」とか「等しくない」とかいうことのなくなった人は、誰に論争を挑むであろうか。

844 家を捨てて、住所を定めずにさまよい、村の中で親交を結ぶことのない聖者は、諸々の欲望を離れ、未来に望みをかけることなく、人々に対して異論を立てて談論をしてはならない。

845 竜(修行完成者)は諸々の偏見を離れて世間を遍歴するのであるから、それらに固執して論争してはならない。たとえば汚れから生える、茎に棘のある蓮が、水にも泥にも汚されないように、そのように聖者は平安を説く者であって、貪ることなく、欲望にも世間にも汚されることがない。

846 真理を知った人は、見解についても、思想についても、慢心に至ることがない。彼らの本性はそのようなものではないからである。彼らは宗教的行為によっても導かれないし、また伝統的な学問によっても導かれない。

847 想いを離れた人には、結ぶいましめが存在しない。智慧によって解脱した人には、迷いが存在しない。想いと偏見とに固執した人々は、互いに衝突しながら、世の中をうろつく。」

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※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。

なお、底本としてパーリ語経典の『スッタニパータ』を使用していますが、学問的な正確性を追求する場合、参考文献である『「ブッダの言葉」中村元訳 岩波文庫』を読むようおすすめします。なお、章題/節題は比較しやすいよう同じにしました。

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