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ブッダ最後の旅【 第6章 】24、死を悼む

投稿日:1999年2月15日 更新日:

【 第6章 】

24、死を悼む

8 ここで、尊師は初禅(第一段階の瞑想)に入られた。初禅から第二禅に入られた。第二禅から第三禅に入られた。第三禅から第四禅に入られた。第四禅から空無辺処定に入られた。空無辺処定から識無辺処定に入られた。識無辺処定から無所有処定に入られた。無所有処定から非想非非想定に入られた。非想非非想定から滅想受定に入られた。

その時、若き人アーナンダ尊者アニルッダにこう言った。
「尊い方よ。アニルッダよ。尊師ニルヴァーナに入られました。」
「友、アーナンダよ。尊師ニルヴァーナに入られたのではありません。滅想受定に入られたのです。」


(2006年6月 管理人撮影/クシナガラ涅槃像)

9 そこで、尊師は滅想受定から非想非非想定に入られた。非想非非想定から無所有処定に入られた。無所有処定から識無辺処定に入られた。識無辺処定から空無辺処定に入られた。空無辺処定第四禅に入られた。第四禅から第三禅に入られた。第三禅から第二禅に入られた。第二禅から初禅に入られた。

初禅から第二禅に入られた。第二禅から第三禅に入られた。第三禅から第四禅に入られた。第四禅からたって、尊師はただちに完全なニルヴァーナに入られた。

10 尊師がお亡くなりになった時、入滅と共に大地震が起こった。人々は恐怖して、身の毛が逆立ち、また、天の鼓(雷鳴)が鳴った。

尊師が亡くなられた時に、亡くなられると共に、サハー世界の主である梵天が次の詩を詠じた。

「この世における一切の生あるものどもは、ついには身体を捨てるのであろう。
あたかも世間において比すべき人なき、かくのごとき師、智慧の力を具えた修行実践者、正しい覚りを開かれた人が亡くなられたように。」

尊師が亡くなられた時に、亡くなられると共に、神々の主であるサッカ(帝釈天)が次の詩を詠じた。

「つくられたものは実に無常であり、生じては滅びる決まりのものである。
生じては滅びる。これらつくられたもののやすらいが安楽である。」

尊師が亡くなられた時に、亡くなられると共に、アニルッダ尊者はこの詩を詠じた。

「心の安住せるかくのごとき人にはすでに呼吸が無かった。
欲を離れた聖者はやすらいに達して亡くなられたのである。
ひるまぬ心をもって苦しみを耐え忍ばれた。
あたかも燈火の消え失せるように、心が解脱したのである。」

尊師が亡くなられた時に、亡くなられると共に、若き人アーナンダはこの詩を唱えた。

「その時、この恐ろしいことがあった。その時、髪の毛のよだつことがあった。
あらゆる点ですぐれた正しく覚りを開いた人がお亡くなりになった時。」

釈尊が亡くなった時にまだ愛執を離れていない若干の修行僧は、両腕を突き出して泣き、砕かれた岩のように打ち倒れ、のたうち回り、転がった。「尊師はあまりにも早くお亡くなりになりました。善き幸いな方はあまりにも早くお亡くなりになりました。世の中の眼はあまりにも早くお隠れになりました」と言って。

しかし、愛執を離れた修行僧らは正しくおもい、よく気を付けて耐えていた。「およそつくられたものは無常である。どうして滅びないことが有り得ようか?」と言って。

11 その時、尊者アニルッダ修行僧らに告げた。「やめなさい。友よ。悲しむな。嘆くな。尊師はかつてあらかじめ、お説きになったではないですか。『全ての愛しき好む者どもとも、生別し、死別し、死後には境界を異にする』と。

友らよ。どうしてこのことが有り得ようか?何でも、生じ、生成し、つくられ、壊滅してしまう性のものが、壊滅しないでいるようにというような、こういう道理は有り得ない。友らよ。神霊たちはつぶやいています」と。
「尊い方よ。どのような神霊たちがつぶやいていると、尊者アニルッダは注意されるのですか?」

「友、アーナンダよ。虚空の内に在って、地のことを想うている神々がいる。彼らは髪を乱して泣き、両腕を突き出して泣き、砕かれた岩のように打ち倒れ、のたうち回り、転がった。『尊師はあまりにも早くお亡くなりになりました。幸いな方はあまりにも早くお亡くなりになりました。世の中の眼はあまりにも早くお隠れになりました』と言って。

友、アーナンダよ。大地の内に在って、地のことを想うている神々がいる。彼らは髪を乱して泣き、両腕を突き出して泣き、砕かれた岩のように打ち倒れ、のたうち回り、転がった。『尊師はあまりにも早くお亡くなりになりました。幸いな方はあまりにも早くお亡くなりになりました。世の中の眼はあまりにも早くお隠れになりました』と言って。

また、情欲を離れた神霊たちは、正しくおもい、よく気を付けて堪え忍んでいます。
『つくられたものは無常である。どうして滅しないというそのことが有り得ようか?』と言って。」

12 そこで、尊者アニルッダと若き人アーナンダとは、その夜中、法に関する講話を説いて過ごした。
さて、尊者アニルッダは若き人アーナンダに告げた。
「友、アーナンダよ。さあ、クシナガラに入って、クシナガラの住民であるマッラ族の人たちに告げなさい。『ヴァーセッタたちよ。尊師はお亡くなりになりました。どうかいつでも、おいで下さい』と。」
「かしこまりました」と、若き人アーナンダ尊者アニルッダに答えて、早朝に内衣を着け、衣と鉢とをたずさえて、一人の従者を連れて、クシナガラに入って行った。

その時、クシナガラの住民であるマッラ族の人々は、ある用件で、公会堂に集まっていた。そこで、若き人アーナンダクシナガラの住民であるマッラ族の公会堂に赴いた。そこに赴いて、クシナガラの住民であるマッラ族の人々に告げた。
「おお、ヴァーセッタたちよ。尊師はお亡くなりになりました。では、どうぞご随意にお出かけ下さい」と。

若き人アーナンダからこのことを聞いて、マッラ族の人々、マッラ族の子たち、マッラ族の嫁たち、マッラ族の妻たちは、苦悶し、憂え、心の苦しみに圧せられていた。ある人々は髪を乱して泣き、両腕を伸ばし突き出して泣き、砕かれた岩のように打ち倒れ、のたうち回り、転がった。
尊師はあまりにも早くお亡くなりになりました。幸いな方はあまりにも早くお亡くなりになりました。世の中の眼はあまりにも早くお亡くなりになりました」と言って。

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※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。

なお、底本としてパーリ語経典長部の『大般涅槃経』(マハー・パリニッバーナ・スッタンタ)を使用していますが、学問的な正確性を追求する場合、参考文献である『「ブッダ最後の旅」中村元訳 岩波文庫』を読むようおすすめします。なお、章題/節題は比較しやすいよう同じにしました。

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