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ブッダ最後の旅【 第4章 】16、鍛冶工チュンダ

投稿日:1999年2月15日 更新日:

【 第4章 】

16、鍛冶工チュンダ

13 そこで尊師はボーガ市に心ゆくまでとどまった後で、若き人アーナンダに言った。
「さあ、アーナンダよ。パーヴァーに行こう。」
「かしこまりました」と若き人アーナンダ尊師に答えた。

それから尊師は多くの修行僧らと共にパーヴァーに赴いた。そこで尊師はパーヴァーにおいて、鍛冶工の子であるチュンダのマンゴー林にとどまった。


(2005年8月 管理人撮影/パーヴァー)

14 鍛冶工の子であるチュンダは聞いた。「尊師は実にパーヴァーに到着された。パーヴァーの内の我がマンゴー林にとどまっておられるとのことだ」と。そこでチュンダ尊師のおられるところに近づいた。尊師に近づいて敬礼して一方に坐した。実に一方に坐したチュンダに、尊師は法に関する講話をして教えて、諭し、激励し、喜ばせた。

15 そこでチュンダは、尊師によって法に関する講話をもって教えられ、諭され、激励され、喜ばされて、次のように言った。
「尊い方よ。尊師は明朝、修行僧らの集いと共に、わたくしの家で食事をなさるのを承諾して下さい」と。
尊師は沈黙によって同意された。

16 そこでチュンダは、尊師の承諾を知って、坐から起ち、尊師に敬礼して、右肩を向けてまわって、去って行った。

17 それからチュンダは、その夜の間に、自分の住居に、美味の歯ごたえのある食べ物・柔らかい食べ物と多くのきのこ料理とを用意して、尊師に時を告げた。
「時間になりました。尊い方よ。お食事は準備してございます」と。

18 そこで尊師は、早朝に内衣を整え、衣と鉢とをたずさえて、修行僧の仲間と共に、チュンダの住居に赴かれた。赴いて、かねて設けられてあった席に坐せられた。坐してから、尊師チュンダに言われた。

チュンダよ。あなたの用意したきのこの料理をわたしに下さい。また用意された他の歯ごたえのある食べ物・柔らかい食べ物を修行僧らにあげて下さい」と。
「かしこまりました」と、チュンダ尊師に答えて、用意したきのこ料理を尊師にさし上げ、用意した他の歯ごたえのある食べ物・柔らかい食べ物を修行僧らにさし上げた。

19 そこで尊師は、チュンダに告げられた。
チュンダよ。残ったきのこ料理は、それを穴に埋めなさい。神々・悪魔・梵天・修行者・バラモンの間でも、また神々・人間を含む生きものの間でも、世の中で、修行完成者(如来)の他には、それを食して完全に消化し得る人を見出しません」と。
「かしこまりました」と、チュンダ尊師に答えて、残ったきのこ料理を穴に埋めて、尊師に近づいた。近づいて尊師に敬礼し、一方に坐した。チュンダが一方に坐した時に、尊師は法に関する講話によって彼を教え、諭し、励まし、喜ばせて、坐から起こって、出て行かれた。

20 さて、尊師鍛冶工の子チュンダの食べ物を食べられた時、激しい病が起こり、赤い血がほとばしり出る、死に至らんとする激しい苦痛が生じた。尊師は実に正しくおもい、よく気を落ち着けて、悩まされることなく、その苦痛を耐え忍んでいた。

さて、尊師は若き人アーナンダに告げられた。
「さあ、アーナンダよ。我らはクシナガラに赴こう」と。
「かしこまりました」と、若き人アーナンダは答えた。

このように、わたくしは聞いた。
鍛冶工であるチュンダのささげた食べ物を食して、
しっかりと気を付けている人は、ついに死に至る激しい病にかかられた。
きのこを食べられたので、に激しい病が起こった。
下痢をしながらも尊師は言われた。
「わたしはクシナガラの都市に行こう」と。

21 それから尊師は路から退いて、一本の樹の根もとに近づかれた。近づいてから、若き人アーナンダに言った。
「さあ、アーナンダよ。あなたはわたしのために外衣を四つ折りにして敷いてくれ。わたしは疲れた。わたしは坐りたい。」
「かしこまりました」と、アーナンダ尊師に答えて、外衣を四重にして敷いた。

22 尊師は設けられた座に坐った。坐ってから尊師は、若き人アーナンダに言った。
「さあ、アーナンダよ。わたしに水を持って来てくれ。わたしは、のどが渇いている。わたしは飲みたいのだ。」
こう言われたので、若き人アーナンダ尊師にこのように言った。
「尊い方よ。今、五百の車が通り過ぎました。ここにあるその河の水は、車輪に割り込まれて、量が少なく、かき乱され、濁って流れています。かのカクッター河は、遠からぬところにあり、水が澄んでいて、水が快く、水が冷ややかで、清らかで、近づきやすく、見るも楽しいのです。尊師はそこで水を飲んで、お身体を冷やして下さい。」

23 再び、尊師は、若き人アーナンダに告げられた。
「さあ、アーナンダよ。わたしに水を持って来てくれ。わたしは、のどが渇いている。わたしは飲みたいのだ。」
こう言われたので、若き人アーナンダ尊師にこのように言った。
「尊い方よ。今、五百の車が通り過ぎました。ここにあるその河の水は、車輪に割り込まれて、量が少なく、かき乱され、濁って流れています。かのカクッター河は、遠からぬところにあり、水が澄んでいて、水が快く、水が冷ややかで、清らかで、近づきやすく、見るも楽しいのです。尊師はそこで水を飲んで、お身体を冷やして下さい。」

24 三度、尊師は、若き人アーナンダに言った。
「さあ、アーナンダよ。わたしに水を持って来てくれ。わたしは、のどが渇いている。わたしは飲みたいのだ。」
「かしこまりました」と、若き人アーナンダ尊師に答えて、鉢をとって、その河に赴いた。
さて、その河は、車輪に割り込まれて、量が少なく、かき乱され、濁って流れていたが、若き人アーナンダが近づいた時には、澄んで、透明で、濁らずに流れていた。

25 そこで若き人アーナンダは、このように思った。「ああ、不思議なことだ。ああ、珍しいことだ。修行完成者には大神通・大威力がある!実にこの小川は車輪に割り込まれて、量が少なく、かき乱され、濁って流れていた。ところが、わたしが近づくと、その河の水は澄んで、透明で、濁らずに流れている!」
彼は鉢で水を汲んで、尊師のいますところに近づいた。近づいて尊師にこのように言った。

「尊い方よ。不思議なことです。珍しいことです。修行完成者には大神通・大威力があります!今この小川は車輪に割り込まれて、量が少なく、かき乱され、濁って流れていた。ところが、わたくしが近づくと、その河の水は澄んで、透明で、濁らずに流れていました。尊師はこの水をお飲み下さい。幸いな方はこの水をお飲み下さい。」
そこで尊師はその水を飲まれた。

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※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。

なお、底本としてパーリ語経典長部の『大般涅槃経』(マハー・パリニッバーナ・スッタンタ)を使用していますが、学問的な正確性を追求する場合、参考文献である『「ブッダ最後の旅」中村元訳 岩波文庫』を読むようおすすめします。なお、章題/節題は比較しやすいよう同じにしました。

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