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ブッダ最後の旅【 第1章 】2、修行僧たちに教える

投稿日:1999年2月15日 更新日:

【 第1章 】

2、修行僧たちに教える

6 そこで尊師は、マガダ国の大臣・バラモンであるヴァッサカーラが立ち去ってから間もなく、若き人アーナンダに告げて言った。


(2005年に管理人が撮影した鷲の峰/霊鷲山)

アーナンダよ。お前は出かけなさい。そうして王舎城の近くに住んでいる修行僧たちを全て会堂に集合させなさい」と。
「かしこまりました」と、若き人アーナンダ尊師に答えて、王舎城の近くに住んでいる修行僧たちを全て講堂に集合させて、尊師のいますところに近づいた。近づいて尊師に敬礼し、一方に立った。一方に立って、若き人アーナンダ尊師に次のように告げた。「尊師よ。修行僧たちはもう集合しています。尊師はどうかご都合の良い時にお出ましください。」と。

そこで尊師は席から起こって、講堂に赴いた。おもむいてから設けられた席に坐した。坐してから尊師修行僧らに告げて言った。
「あなたたち修行僧たちよ。衰亡を来たさないための七つの法を、わたしはこれから説くであろう。それをよく聞け。心にとどめなさい。」と。
「かしこまりました」と、その修行僧たちは尊師に答えた。尊師は次のように説かれた。

修行僧たちよ。修行僧たちがしばしば会議を開き、会議には多くの人が参集する間は、修行僧らには繁栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。修行僧たちが未来の世に、協同して集合し、協同して行動し、協同して教団の為すべきことを為す間は、修行僧らよ、修行僧たちに繁栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。修行僧たちが、未来の世に、未だ定められていないことを定めず、すでに定められたことを破らず、すでに定められた通りの戒律を保って実践するならば、修行僧らよ、修行僧たちに繁栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。修行僧たちが、未来の世に、経験豊かな、出家して久しい長老たち、教団の父、教団の導き手を敬い、尊び、崇め、もてなし、そうして彼らの言葉は聴くべきであると思う間は、修行僧らよ、修行僧たちに繁栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。修行僧たちが、後の迷いの生存を引き起こす愛執が起こっても、それに支配されない間は、修行僧らよ、修行僧たちに繁栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。修行僧たちが、林間の住処に住むのを望んでいる間は、修行僧らよ、修行僧たちに繁栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。修行僧たちが、みずから心のおもいを安定し、未だ来ない良き修行者なる友が来るように、また、すでに来た良き修行者なる友が快適に暮らせるようにと願っている間は、修行僧らよ、修行僧たちに繁栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。この七つの衰亡を来たさざる法修行僧たちの内に存在し、また修行僧たちが、この七つの衰亡を来たらざる法を守っているのが見られる間は、修行僧らよ、修行僧たちに繁栄が期待され、衰亡は無いであろう。」

7 「修行僧たちよ。さらに他の七つの衰亡を来たさざる法を、わたしは説くであろう。それを聞け。よく心にとどめよ。」
「かしこまりました」と、彼ら修行僧たちは尊師に答えた。尊師は次のように説かれた。

「①修行僧たちよ。未来の世に、修行僧たちが動作を喜ばず、動作を楽しまず、好んで動作に従事しない間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

②また修行僧たちよ。未来の世に、修行僧たちが談話を喜ばず、談話を楽しまず、好んで談話にふけらない間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

③また修行僧たちよ。未来の世に、修行僧たちが睡眠を喜ばず、睡眠を楽しまず、好んで睡眠にふけらないない間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

④また修行僧たちよ。未来の世に、修行僧たちが社交を喜ばず、社交を楽しまず、好んで社交にふけらないない間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

⑤また修行僧たちよ。修行僧たちが未来の世に、悪い欲望をいだかず、諸々の悪い欲望に支配されない間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

⑥また修行僧たちよ。未来の世に、修行僧たちが悪友を持たず、悪い仲間を持たず、悪い同輩を持たない間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

⑦また修行僧たちよ。未来の世に、修行僧たちが少しばかり勝れた境地に到達したことによって、ニルヴァーナへの到達への途中でその中止に陥ることがない間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。この七つの衰亡を来たさざる法修行僧たちの内に存在し、また修行僧たちが、この七つの衰亡を来たさざる法を守っていることが見られる間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。」

8 「修行僧たちよ。さらに他の七つの衰亡を来たさざる法をわたしは説くであろう。それを聞け。よく心にとどめよ。」
「かしこまりました」と、彼ら修行僧たちは尊師に答えた。尊師は次のように説かれた。

修行僧たちよ。また修行僧たちが未来の世に、①信があり、②悪を嫌悪し、③悪を為すと自身に悪いことが起こるのではないかと恐れ、④博学であり、⑤努力し励み、⑥心のおもいが安定していて、⑦智慧を持ったものであるならば、その間は、修行僧たちに繁栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。この七つの衰亡を来たさざる法が修行僧たちの内に存在し、また修行僧たちが、この七つの衰亡を来たさざる法を守っていることが見られる間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。」

9 「修行僧たちよ。さらに他の七つの衰亡を来たさざる法をわたしは説くであろう。それを聞け。よく心にとどめよ。」
「かしこまりました」と、彼ら修行僧たちは尊師に答えた。尊師は次のように説かれた。

修行僧たちよ。また修行僧たちが未来の世に、①よく思いをこらす悟りの事柄を修し、②よく法を選び分ける悟りの事柄を修し、③よく努力する悟りの事柄を修し、④よく喜びに満ち足りる悟りの事柄を修し、⑤心身が軽やかになる悟りの事柄を修し、⑥精神統一という悟りの事柄を修し、⑦心の平静安定という悟りの事柄を修すならば、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。この七つの衰亡を来たさざる法が修行僧たちの内に存在し、また修行僧たちが、この七つの衰亡を来たさざる法を守っていることが見られる間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。」

10 「修行僧たちよ。さらに他の七つの衰亡を来たさざる法をわたしは説くであろう。それを聞け。よく心にとどめよ。」
「かしこまりました」と、彼ら修行僧たちは尊師に答えた。尊師は次のように説かれた。

修行僧たちよ。また修行僧たちが未来の世に、あらゆるものは無常であるという想いを修すならば、また、②あらゆるものは我(アートマン)ならざるものであるという想いを修すならば、また、③あらゆるものは不浄であるという想いを修すならば、また、④あらゆるものはいとわしいものであるという想いを修すならば、また、⑤あらゆるものを捨て去る想いを修すならば、また、⑥あらゆる欲情から離れる想いを修すならば、また、⑦止滅の想いを修すならば、その間は、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。この七つの衰亡を来たさざる法が修行僧たちの内に存在し、また修行僧たちが、この七つの衰亡を来たさざる法を守っていることが見られる間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。」

11 「修行僧たちよ。さらにこの六つの衰亡を来たさざる法をわたしは説くであろう。それを聞け。よく心にとどめよ。」
「かしこまりました」と、彼ら修行僧たちは尊師に答えた。尊師は次のように説かれた。

修行僧たちよ。また修行僧たちが慈しみのある身体的行動(身業)を、共に修行する人々に対して、公にも秘密の内にも確かに実行しているならば、その間は、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。また修行僧たちが慈しみのある言葉づかい(口業)を、共に修行する人々に対して、公にも秘密の内にも確かに実行しているならば、その間は、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。また修行僧たちが慈しみのある心づかい(意業)を、共に修行する人々に対して、公にも秘密の内にも確かに実行しているならば、その間は、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。また修行僧たちが未来の世に、修行僧のための規定にかなって得られたものを、単に鉢に入れられて得られたものに至るまでも、分配することなしに食することが無く、戒めを保つ共同修行者たちと仲良く分け合って食するならば、その間は、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。また修行僧たちが、切れ切れではなくて、過ちの無い、まじりの無い、汚れていないで、自在であって、知者の称賛する、汚れの無い、精神統一をあらわし出すような戒律に関して、共同修行者たちと、公にも秘密の内にも戒律を守る修行僧の境地を実践しているならば、その間は、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。また修行僧たちが、迷いの領域から離脱し得るような、それを実践する人をして完全に苦しみを無くさせるような、そのような立派で正しい見解によって、共同修行者たちと、公にも秘密の内にも正しい見解の究極の境地を実践しているならば、その間は、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。

修行僧たちよ。この六つの衰亡を来たさざる法が修行僧たちの内に存在し、また修行僧たちが、この六つの衰亡を来たさざる法を守っていることが見られる間は、修行僧らよ、修行僧たちに繫栄が期待され、衰亡は無いであろう。」

12 尊師はかの王舎城鷲の峰(霊鷲山)なる山に住して、修行僧たちのために、このように数多くの法に関する講話をなさった。「戒律とはこのようなものである。精神統一とはこのようなものである。智慧とはこのようなものである。戒律と共に修行して完成された精神統一は大いなる果報をもたらし、大いなる功徳がある。精神統一と共に修養された智慧は偉大な果報をもたらし、大いなる功徳がある。智慧と共に修養された心は、諸々の汚れ、すなわち欲望の汚れ、生存の汚れ、見解の汚れ、無明の汚れから全く解脱する」と。

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※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。

なお、底本としてパーリ語経典長部の『大般涅槃経』(マハー・パリニッバーナ・スッタンタ)を使用していますが、学問的な正確性を追求する場合、参考文献である『「ブッダ最後の旅」中村元訳 岩波文庫』を読むようおすすめします。なお、章題/節題は比較しやすいよう同じにしました。

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