爾れば夫れ楞厳の和尚(源信)の解義を案ずるに、「念仏証拠門」(往生要集)の中に、第十八の願は別願の中の別願なりと顕開したまえり。『観経』の定散諸機は、「極重悪人唯称弥陀」と勧励したまえるなり。濁世の道俗、善く自ら己が能を思量せよとなり。知るべし。
問う。『大本』(大経)の三心と『観経』の三心と、一異云何ぞや。
答う。釈家(善導)の意に依りて『無量寿仏観経』を案ずれば、顕彰隠密の義有り。
「顕」と言うは、即ち定散諸善を顕し、三輩・三心を開く。然るに二善・三福は報土の真因に非ず。諸機の三心は自利各別にして、利他の一心に非ず。如来の異の方便、欣慕浄土の善根なり。是れは此の『経』(観経)の意なり。即ち是れ顕の義なり。
「彰」と言うは、如来の弘願を彰し、利他通入の一心を演暢す。達多・闍世の悪逆に縁りて、釈迦微咲の素懐を彰す。韋提別選の正意に因りて、弥陀大悲の本願を開闡す。斯れ乃ち此の『経』(同)の隠彰の義なり。
是を以て、『経』(同)には、「教我観於清浄業処」と言えり。「清浄業処」と言うは則ち是れ本願成就の報土なり。
「教我思惟」(同)と言うは即ち方便なり。
「教我正受」(同)と言うは即ち金剛の真心なり。
「諦観彼国浄業成者」(同)と言えり。本願成就の尽十方無碍光如来を観知すべしとなり。
「広説衆譬」(同)と言えり。則ち十三観、是れなり。
「汝是凡夫心想羸劣」(同)と言えり。則ち是れ悪人往生の機たることを彰すなり。
「諸仏如来有異方便」(同)と言えり。則ち是れ定散諸善、方便の教たることを顕すなり。
「以仏力故見彼国土」(同)と言えり。斯れ乃ち他力の意を顕すなり。
「若仏滅後諸衆生等」(同)と言えり。即ち是れ未来の衆生、往生の正機たることを顕すなり。
「若有合者名為麁想」(同)と言えり。是れ定観成じ難きことを顕すなり。
「於現身中得念仏三昧」(同)と言えり。即ち是れ定観成就の益は、念仏三昧を獲るを以て観の益とすることを顕す。即ち観門を以て方便の教とせるなり。
「発三種心即便往生」(同)と言えり。又「復有三種衆生当得往生」(同)と言えり。此れ等の文に依るに、三輩に就いて三種の三心有り、復た二種の往生有り。
良に知りぬ、此れ乃し此の『経』(同)に顕彰隠密の義有ることを。二経の三心、将に一異を談ぜんとす。善く思量すべきなり。『大経』・『観経』、顕の義に依れば異なり、彰の義に依れば一なり。知るべし。
(化身土巻 - 本 は続く)
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