【仏教用語/人物集 索引】

『教行信証』信巻10

投稿日:1224年1月1日 更新日:

 信に知りぬ。「至心」・「信楽」・「欲生」、其の言異なりと雖も、其の意、惟れ一なり。何を以ての故に。三心、已に疑蓋、雑わること無し。故に真実の一心なり。是れを「金剛の真心」と名づく。金剛の真心、是れを「真実の信心」と名づく。真実の信心は必ず名号を具す、名号は必ずしも願力の信心を具せざるなり。是の故に論主、建めに「我一心」と言えり。又「如彼名義欲如実修行相応故」と言えり。

 凡そ大信海を案ずれば、貴賤緇素を簡ばず、男女老少を謂わず、造罪の多少を問わず、修行の久近を論ぜず、行に非ず、善に非ず、頓に非ず、漸に非ず、定に非ず、散に非ず、正観に非ず、邪観に非ず、有念に非ず、無念に非ず、尋常に非ず、臨終に非ず、多念に非ず、一念に非ず。唯是れ不可思議・不可説・不可称の信楽なり。喩えば阿伽陀薬の、能く一切の毒を滅するが如し。如来誓願の薬は能く智愚の毒を滅するなり。

 然るに菩提心に就いて二種有り。一には竪、二には横なり。又「竪」に就いて復た二種有り。一には竪超、二には竪出なり。「竪超」・「竪出」は、権実・顕密・大小の教に明かせり。歴劫迂回の菩提心、自力の金剛心、菩薩の大心なり。亦「横」に就いて復た二種有り。一には横超、二には横出なり。「横出」は、正雑・定散・他力の中の自力の菩提心なり。「横超」は、斯れ乃ち願力回向の信楽、是れを「願作仏心」(論註)と曰う。願作仏心即ち是れ横の大菩提心なり。是れを「横超の金剛心」と名づくるなり。

 横・竪の菩提心、其の言、一にして、其の心、異なりと雖も、入真を正要とす、真心を根本とす、邪雑を錯とす、疑情を失とするなり。欣求浄刹の道俗、深く信不具足の金言を了知し、永く聞不具足の邪心を離るべきなり。

 『論註』に曰わく、「王舎城所説の『無量寿経』を案ずるに、三輩生の中に行に優劣有りと雖も、皆無上菩提の心を発せざるは莫し。此の無上菩提心は即ち是れ願作仏心なり。願作仏心は即ち是れ度衆生心なり。度衆生心は即ち是れ衆生を摂取して有仏の国土に生ぜしむる心なり。是の故に彼の安楽浄土に生まれんと願ずるは、要ず無上菩提心を発するなり。若し人、無上菩提心を発せずして、但、彼の国土の受楽、間無きを聞きて、楽の為の故に生まれんと願ぜん。亦当に往生を得ざるべきなり。是の故に言うこころは、「自身住持の楽を求めず。一切衆生の苦を抜かんと欲うが故に」(論)と。「住持楽」は、謂わく、彼の安楽浄土は、阿弥陀如来の本願力の為に住持せられて、受楽、間無きなり。凡そ回向の名義を釈せば、謂わく、己が所集の一切の功徳を以て、一切衆生に施与したまいて、共に仏道に向かえしめたまうなり」と。抄出

 元昭(元照)律師の云わく(阿弥陀経義疏)、「他の為すこと能わざるが故に「甚難」(阿弥陀経)なり。世、挙って未だ見たてまつらざるが故に「希有」(同)なり」といえり。

 又云わく(元照阿弥陀経義疏)、「念仏法門は、愚智豪賤を簡ばず、久近善悪を論ぜず。唯、決誓猛信を取れば、臨終悪相なれども十念に往生す。此れ乃ち具縛の凡愚、屠沽の下類、刹那に超越する成仏の法なり。「世間甚難信」と謂うべきなり。」

 又云わく(元照阿弥陀経義疏)、「此の悪世にして修行成仏するを難とするなり。諸の衆生の為に此の法門を説くを二の難とするなり。前の二難を承けて、則ち諸仏所讃の虚しからざる意を彰す。衆生、聞きて信受せしめよとなり」と。已上

 律宗の用欽の云わく(超玄記)、「法難を説く中に、良に此の法を以て凡を転じて聖と成すこと、掌を反すが猶くなるをや。大きに為れ易かるべきが故に。凡そ浅き衆生は多く疑惑を生ぜん。即ち『大本』(大経)に「易往而無人」と云えり。故に知りぬ、難信なりと。」

 『聞持記』に云わく、「「不簡愚智」(元照阿弥陀経義疏)というは、性に利鈍有り。「不択豪賤」(同)というは、報に強弱有り。「不論久近」(同)というは、功に浅深有り。「不選善悪」(同)というは、行に好醜有り。「取決誓猛信臨終悪相」(同)というは、即ち『観経』の下品中生に「地獄の衆火、一時に倶に至る」と等。「具縛凡愚」(同)というは、二惑、全く在るが故に。「屠沽下類刹那超越成仏之法可謂一切世間甚難信也」(同)というは、「屠」は、謂わく、殺を宰る。「沽」は即ち醞売、此くの如し。悪人、止、十念に由りて、便ち超往を得。豈に難信に非ずや。」

(「信巻」続く)

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