【仏教用語/人物集 索引】

「正法眼蔵」受戒(じゅかい)

投稿日:2020年9月24日 更新日:

禅苑清規云、三世諸仏、皆曰出家成道。西天二十八祖、唐土六祖、伝仏心印、尽是沙門。蓋以厳浄毘尼、方能洪範三界。然則参禅問道、戒律為先。即非離過防非、何以成仏作祖(禅苑清規に云く、三世諸仏、皆な出家成道と曰ふ。西天二十八祖、唐土六祖、仏心印を伝ふる、尽く是れ沙門なり。蓋し以て毘尼を厳浄して方に能く三界に洪範たり。然あれば則ち参禅問道は戒律為先なり。即に過を離れ非を防ぐに非ずは、何を以てか成仏作祖せん)。

受戒之法、応備三衣鉢具并新浄衣物。如無新衣、浣洗令浄。入壇受戒、不得借賃衣鉢。一心専注、愼勿異縁。像仏形儀、具仏戒律、得仏受用、此非小事。豈可軽心。若借賃衣鉢、雖登壇受戒、竝不得戒。若不曽受、一生為無戒之人。濫廁空門、虚消信施。初心入道、法律未諳、師匠不言、陷人於此。今茲苦口、敢望銘心(受戒の法は、応に三衣鉢具并びに新浄の衣物を備ふべし。新衣無きが如きは、浣洗して浄からしむべし。入壇受戒には、衣鉢を借賃すること得ざれ。一心専注して、愼んで異縁あること勿れ。仏の形儀に像り、仏の戒律を具す、仏受用を得る、此れ小事に非ず。豈に軽心なるべけんや。若し衣鉢を借賃せば、登壇受戒すと雖も、竝びに得戒せず。若し曽受せずは、一生無戒の人為らん。濫りに空門に廁り、虚しく信施を消せん。初心の入道は、法律未だ諳んぜず、師匠言はずは、人を此に陷れん。今茲に苦口す、敢て望すらくは心に銘ずべし)。
即受声聞戒、応受菩薩戒。此入法之漸也(即に声聞戒を受くれば、応に菩薩戒を受くべし。此れ入法の漸なり)。

西天東地、仏祖相伝しきたれるところ、かならず入法の最初に受戒あり。戒をうけざればいまだ諸仏の弟子にあらず、祖師の児孫にあらざるなり。離過防非を参禅問道とせるがゆゑなり。戒律為先の言、すでにまさしく正法眼蔵なり。成仏作祖、かならず正法眼蔵を伝持するによりて、正法眼蔵を正伝する祖師、かならず仏戒を受持するなり、仏戒を受持せざる仏祖あるべからざるなり。あるいは如来にしたがひたてまつりてこれを受持し、あるいは仏弟子にしたがひてこれを受持す、みなこれ命脈稟受するところなり。

いま仏々祖々正伝するところの仏戒、ただ嵩嶽曩祖まさしく伝来し、震旦五伝して曹渓高祖にいたれり。青原南嶽等の正伝、いまにつたはれりといへども、杜撰の長老等かつてしらざるもあり、もともあはれむべし。

いはゆる応受菩薩戒、此入法之漸也、これすなはち参学のしるべきところなり。その応受菩薩戒の儀、ひさしく仏祖の堂奥に参学するもの、かならず正伝す。疎怠のともがらのうるところにあらず。

その儀は、かならず祖師を焼香礼拝し、応受菩薩戒を求請するなり。すでに聴許せられて、沐浴清浄にして新浄の衣服を著し、あるいは衣服を浣洗して、花を散じ、香をたき、礼拝恭敬してその身に著す。あまねく形像を礼拝し、三宝を礼拝し、尊宿を礼拝し、諸障を除去し、身心清浄なることをうべし。その儀ひさしく仏祖の堂奥に正伝せり。
そののち、道場にして和尚、阿闍梨、まさに受者ををしへて礼拝し、長跪せしめて合掌し、この語をなさしむ。

帰依仏、帰依法、帰依僧。
帰依仏陀両足中尊、帰依達磨離欲中尊、帰依僧伽衆中尊。
帰依仏竟、帰依法竟、帰依僧竟。
如来至真無上正等覚是我大師。我今帰依、従今已後、更不帰依邪魔外道。慈愍故。[三説。第三畳慈愍故三遍](如来至真無上正等覚は是れ我が大師なり。我れ今帰依したてまつる、今より已後、更に邪魔外道に帰依せじ。慈愍したまふが故に。[三説。第三には慈愍故三遍を畳す])

善男子、即捨邪帰正、戒已周円。応受三聚清浄戒(善男子、即に邪を捨し正に帰して、戒已に周円せり。応に三聚清浄戒を受くべし)。
第一、摂律儀戒。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第二、摂善法戒。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第三、饒益衆生戒。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
上来三聚清浄戒、一一不得犯。汝従今身至仏身、能持否(上来三聚の清浄戒、一一犯すること得ざれ。汝、今身より仏身に至るまで、能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
是事如是持(是の事、是の如く持すべし)。
受者礼三拝、長跪合掌。

善男子、汝即受三聚清浄戒、応受十戒。是乃諸仏菩薩清浄大戒也(善男子、汝、即に三聚清浄戒を受けたり、応に十戒を受くべし。是れ乃ち諸仏菩薩清浄大戒也)。
第一、不殺生。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第二、不偸盗。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第三、不貪婬。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第四、不妄語。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第五、不酤酒。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第六、不説在家出家菩薩罪過。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第七、不自讃毀他。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第八、不慳法財。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第九、不瞋恚。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
第十、不癡謗三宝。汝従今身至仏身、此戒能持否(汝、今身より仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
上来十戒、一一不得犯。汝従今身至仏身、能持否(上来の十戒、一一犯すること得ざれ。汝、今身より仏身に至るまで、能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
是事如是持(是の事、是の如く持すべし)。
受者礼三拝。

上来三帰、三聚浄戒、十重禁戒、是諸仏之所受持。汝従今身至仏身、此十六支戒、能持否(上来の三帰、三聚浄戒、十重禁戒は、是れ諸仏の受持したまふ所なり。汝、今身より仏身に至るまで、此の十六支戒、能く持つや否や)。
答云、能持。[三問三答]
是事如是持(是の事、是の如く持すべし)。
受者礼三拝。
次作処世界梵訖云(次に処世界梵を作し訖つて云く)、
帰依仏、帰依法、帰依僧。
次受者出道場(次に受者、道場を出づ)。

この受戒の儀、かならず仏祖正伝せり。丹霞天然、薬山高沙弥等、おなじく受持しきたれり。比丘戒をうけざる祖師、かくのごとくあれども、この仏祖正伝菩薩戒うけざる祖師、いまだあらず。必ず受持するなり。

正法眼蔵第二受戒

※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。より分かりやすくする為に漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではありません。

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