【仏教用語/人物集 索引】

『伝光録』第三十七祖。雲巌無住大師。

投稿日:2004年1月12日 更新日:

【本則】

第三十七祖。雲巌無住大師。初参侍百丈二十年。後参薬山。山問。百丈更説甚麼法。師曰。百丈有時上堂。大衆立定。以拄杖一時趁散。復召大衆。衆回首。丈曰。是甚麼。山曰。何不早恁麼道。今日因子得見海兄。師於言下大悟。

【機縁】

師者鍾陵建昌王氏子。少出家石門。参百丈海禅師二十年。因縁不契。後謁薬山。山問。甚麼処来。師曰。百丈来。山曰。百丈有何言句示衆。師曰。尋常曰。我有一句子。百味具足。山曰。鹹則鹹味。淡則淡味。不鹹不淡是常味。作麼生是百味具足底句。師無対。山曰。争奈目前生死何。師曰。目前無生死。山曰。在百丈多少時。師曰。二十年。山曰。二十年在百丈俗氣也不除。他日侍立次。山又問。百丈更説甚麼法。師曰。有時道。三句外省去。六句外会取。山曰。三千里外且喜沒交渉。又問。更説甚麼法。師曰。有時上堂乃至師於言下大悟。

【拈提】

夫れ参禅学道。もとより心をあきらめ。旨を悟るをもてその指要とす故に。雲巌和尚も百丈にありて参じ来ること二十年。然れども因縁不契。のちに薬山に参ず。然れば必ずしも久習修学もよみすべからず。たた心をあきらむるをもて本とす。また因縁契当すること初心によらず。後心によらず。宿縁しからしめて如是。百丈是その人ならざるにあらず。自ら因縁かなはざるのみなり。それ善知識として徒に衆をあつめ。人をはごくむにあらず。ただ人をして直に根源にとおり。すみやかに本分に承当せしめんとす。故に古人必ず何れの処よりか来るといふ。夫れ遍参は知識をこころみんとし。来処をわきまへんとす。またきたりてなにごとの為にかせんと問。其の志の浅深を明らむ。その縁の遠近をしらんとす故に。今も何れの処よりか来ると問。彼しこに参じここに参じて。徒に山水に経歴せざることをあらはさん為に。すなはち曰く。百丈より来れりと。薬山・百丈同出世して。青原・南嶽角立せり。因に百丈有何言句示衆と問。ここにをいて雲巌若しそのならば。自聞得底の事を挙説すべきに。たたきく底事を説て曰く。尋常道我有一句子。百味具足とす。那一句子具足せずといふことなく。円満せずといふことなし。然りといへども。人の那一著を聞得すやいなや。子細に知見せん為に。鹹則鹹味。淡則淡味。不鹹不淡是常味。作麼生是百味具足底の句と問。はたして聞得底の事にあらず。父母所生の耳をもて。徒に蝦の口説をきくによりて。茫然として答処をしることなし。是れ薬山行脚より以来。修道すること幾年ぞと問ふに。答云二十年と。実に是古人道の為に修錬せし。十二時中徒らなる時節なしといへども。今の如きは二十年徒に差過するに似たり。これによりて薬山曰。争奈目前生死何んと。実にこれ初心晩学一大事とすべきところなり。無常迅速生死事大なり。たとひ発心行脚して。方袍円頂の形を具すといへども。若し生死の事をあきらめず。解脱の道に達せずんば。衲衣下密密の事あることをしらず。故に三界の攀籠いづることなく。生死の窠臼まぬかれ難し。実にこれ衲衣徒かけたるがごとし。応器徒に持せるに似たり。故に古人人をして閑工夫の時節なからしむ。故に手脚おだやかにせんとして。恁麼に問に。口にまかせてすなはち曰く。目前に生死なしと。ただこれ自己安楽のところを参得し。子細に行脚の本志に達せば。恁麼の見処あるべからず。山曰。在百丈多少時。行脚より以来修道することいくとしぞと問。すなはち曰く。二十年。実にこれ古人道の為に修練せし。十二時中徒なる時節なしといへども。いまこのごときは二十年徒に蹉過せるに似たり。故に示して曰く。二十年在百丈俗氣也不除。たとひ無生死なりと会し。自他なしと見来るとも。恁麼の見処自己本来の頭を識得せず。まさに手を断崖に撒する分なし。速かに身を空劫に回さずんばなをこれ俗氣未除。故に識情未破。窂獄未破。あにかなしまざるべけんや。故に子細に打著せしめん為に問こと再参す。然れども猶覚知する分なし。設ひ六句の外に承当すとも。なを無孔の鉄鎚軌則をなさず。たとひ千差の岐路を截断する分ありとも。なを自己の本明にくらし。三千里外且喜くは沒交渉。来りて相見する。これあだか用なきに似たりと重ねて指説す。ここにいたりて百丈下堂の句を挙似すといへども。なをこれ他の舌頭にわたる。自の証処に達せず。然れども恁麼に挙著して。はやく一段の宗風異路底の事なく挙説し来る。故に曰く。何不早恁麼道。今日因子得見海兄。実にこれ大衆立定。以拄杖一時趁散せし意。実に独脱無依にして来れり。かさねて調打にわづらふべきにあらず。然れどもただ如是挙せば。たとひ塵劫を経るとも。卒に所得の分なきに似たり。因て渠をして驚ろかさしめん為に。すなはち高声に大衆と召す。南辺打著すれば北辺動し来る。故に不覚回首悟処終に思量にわたらず。点頭し来ること如是。これによりて曰く。是れ甚麼んぞと。うらむらくは百丈の会下。一箇も会せざりけるか。このところに道取なしといへども。薬山はるかに曰く。因子得見海兄。実に古人恁麼の田地に一句道著する時。すなはちいはく相見了也と。また実に千里同風に似たり。また一絲もへだてなきに似たり。故に始め百丈に参し。薬山にのぼることを得て。終に師資へだてなく。彼此参得す。この田地に承当せば。ただ自己曠劫已来の事をうたがはざるのみにあらず。三世諸仏。六代祖師。有鼻孔底の衲僧。一覰覰破し。一箚に箚破して。はやく薬山・百丈に相見し。直に雲巌・道吾に眸を合することをゑん。しばらくいかんが這箇の道理を通じ得てん。大衆要聞麼。

【頒古】

孤舟不掉月明進。回頭古岸蘋未搖。

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