【仏教用語/人物集 索引】

「正法眼蔵」転法輪(てんぼうりん)

投稿日:1244年2月27日 更新日:

先師天童古仏上堂挙、世尊道、一人発真帰源、十方虚空、悉皆消殞(先師天童古仏、上堂に挙す、世尊道はく、一人発真帰源すれば、十方虚空悉皆消殞す)。

師拈云、既是世尊所説、未免尽作奇特商量。天童則不然、一人発真帰源、乞児打破飯椀(師、拈じて云く、既に是れ世尊の所説なり、未だ免れず尽く奇特の商量を作すことを。天童は則ち然らず、一人発真帰源すれば、乞児飯椀を打破す)。

五祖山法演和尚道、一人発真帰源、十方虚空、築著磕著。
仏性法泰和尚道、一人発真帰源、十方虚空、只是十方虚空。
夾山圜悟禅師克勤和尚云、一人発真帰源、十方虚空、錦上添花。
大仏道、一人発真帰源、十方虚空、発真帰源。

いま挙するところの一人発真帰源、十方虚空、悉皆消殞は首楞厳経のなかの道なり。この句、かつて数位の仏祖おなじく挙しきたれり。いまよりこの句、まことに仏祖骨髓なり、仏祖眼睛なり。

しかいふ心は、首楞厳経一部拾軸、あるいはこれを偽経といふ、あるいは偽経にあらずといふ。両説すでに往々よりいまにいたれり。旧訳あり、新訳ありといへども、疑著するところ、神龍年中の訳をうたがふなり。

しかあれども、いますでに五祖の演和尚、仏性泰和尚、先師天童古仏、ともにこの句を挙しきたれり。ゆゑにこの句すでに仏祖の法輪に転ぜられたり、仏祖法輪転なり。このゆゑにこの句すでに仏祖を転じ、この句すでに仏祖をとく。仏祖に転ぜられ、仏祖を転ずるがゆゑに、たとひ偽経なりとも、仏祖もし転挙しきたらば真箇の仏経祖経なり、親曽の仏祖法輪なり。たとひ瓦礫なりとも、たとひ黄葉なりとも、たとひ優曇花なりとも、たとひ金襴衣なりとも、仏祖すでに拈来すれば仏法輪なり、仏正法眼蔵なり。

しるべし、衆生もし超出成正覚すれば仏祖なり、仏祖の師資なり、仏祖の皮肉骨髓なり。さらに従来の兄弟衆生を兄弟とせず。仏祖これ兄弟なるがごとく、拾軸の文句たとひ偽なりとも、而今の句は超出の句なり。仏句祖句なり、余文余句に群すべからず。たとひこの句は超越の句なりとも、一部の文句性相を仏言祖語に擬すべからず、参学眼睛とすべからず。而今の句を諸句に比論すべからざる道理おほかる、そのなかに一端を挙拈すべし。

いはゆる転法輪は、仏祖儀なり。仏祖いまだ不転法輪あらず。その転法輪の様子、あるいは声色を挙拈して声色を打失す。あるいは声色を跳脱して転法輪す。あるいは眼睛を抉出して転法輪す。あるいは拳頭を挙起して転法輪す。あるいは鼻孔をとり、あるいは虚空をとるところに、法輪自転なり。而今の句をとる、いましこれ明星をとり、鼻孔をとり、桃花をとり、虚空をとるすなはちなり。仏祖をとり、法輪をとるはすなはちなり。この宗旨、あきらかに転法輪なり。

転法輪といふは、功夫参学して一生不離叢林なり、長連床上に請益弁道するをいふ。

正法眼蔵第六十七

爾時寛元二年甲辰二月二十七日在越宇吉峰精舎示衆
同三月一日在同精舎侍者寮書写之 後以御再治本校勘書写之畢

※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。より分かりやすくする為に漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではありません。

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