【仏教用語/人物集 索引】

『正法眼蔵随聞記』63、唐の太宗即位の後

投稿日:1235年6月11日 更新日:

一夜示して云く、唐の太宗即位の後、旧き殿に栖み給えり。破損せる間、湿気あがり、侵して玉躰侵さるべし。臣下作造るべき由を奏しければ、帝の云く、「時、農節なり。民定めて愁あるべし。秋を待って造るべし。湿気に侵されば地に受けられず、風雨に侵されば天に叶わざるなり。天地に背かば身あるべからず、民を煩わさずんば自ら天地に叶うべし。天地に叶わば身を犯すべからず。」と云って、終に宮を作らず、古き殿に栖み給えり。

況んや仏子は、如来の家風を受け、一切衆生を一子の如くに憐れむべし。我れに属する侍者所従なればとて、呵嘖し煩わすべからず。何に況んや同学等侶耆年宿老等を恭敬する事、如来の如くすべしと、戒文分明なり。然れば今の学人も、人には色に出でて知られずとも、心中に上下親疎を別たず、人の為にはよからんと思うべきなり。大小の事につけて、人を煩わし心を傷す事有るべからざるなり。

如来在世に外道多く如来を謗じ悪むも有りき。仏弟子問うて云く、「本より柔和を本とし慈を心とす。一切衆生等しく恭敬すべし。何の故にか是の如く随わざる衆生ある。」
仏言く、「我れ昔衆を領ぜし時、多く呵嘖羯摩をもて弟子をいましめき。是れに依って今是の如。」と。律中に見えたり。

然れば即ち住持長老として衆を領じたりとも、弟子の非をただしいさめんとて呵嘖の言を用うべからず。柔和の言を以ていさめ勧むとも、随うべくんは随うべきなり。況んや衲子は、親疎兄弟等の為にあらき言を以て人をにくみ呵噴する事は、一向に止むべきなり。能々用意すべきなり。

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『正法眼蔵随聞記』

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