【仏教用語/人物集 索引】

『教行信証』化身土巻 - 末05

投稿日:1224年1月1日 更新日:

 爾の時に仏、月蔵菩薩摩訶薩に告げて言わく、「清浄士を了知するに、此の賢劫の初め人寿四万歳の時、鳩留孫仏、世に出興したまいき。彼の仏、無量阿僧祇億那由他百千の衆生の為に、生死に回して正法輪を輪転せしむ。追うて悪道に回して、善道及び解脱の果を安置せしむ。彼の仏、此の四大天下を以て、娑婆世界の主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王等に付嘱せしむ。護持の故に、養育の故に、衆生を憐陀の故に、三宝の種、断絶せざらしめんが故に、熾然ならんが故に、地の精気・衆生の精気・正法の精気、久しく住せしめ増長せんが故に、諸の衆生をして三悪道を休息せしめんが故に、三善道に趣向せんが故に、四天下を以て大梵及び諸天王に付嘱せしむ。

 是くの如き漸次に、劫尽き、諸天人尽き、一切善業・白法尽滅して、大悪・諸の煩悩溺を増長せん。人寿三万歳の時、拘那含牟尼仏、世に出興したまわん。彼の仏、此の四大天下を以て、娑婆世界主大梵天王・他化自在天王、乃至四大天王及び諸の眷属に付嘱したまう。護持養育の故に、乃至、一切衆生をして三悪道を休息して三善道に趣向せしめんが故に、此の四天下を以て大梵及び諸天王に付嘱したまう。

 是くの如き次第に、劫尽き、諸天人尽き、白法亦尽きて、大悪・諸の煩悩溺を増長せん。人寿二万歳の時、迦葉如来、世に出興したまう。彼の仏、此の四大天下を以て娑婆世界の主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・憍尸迦帝釈・四天王等及び諸の眷属に付嘱したまえり。護持養育の故に、乃至、一切衆生をして三悪道を休息せしめ三善道に趣向せしめんが故に、彼の迦葉仏、此の四天下を以て大梵・四天王等に付嘱し、及び諸天仙衆・七曜・十二天童女・二十八宿等に付したまえり。護持の故に、養育の故に。

 清浄士を了知するに、是くの如き次第に、今、劫濁・煩悩濁・衆生濁・大悪煩悩濁・闘諍悪世の時、人寿百歳に至るまで、一切の白法尽き、一切諸悪闇翳ならん。世間は、譬えば海水の一味にして大鹹なるが如し。大煩悩の味、世に遍満せん。集会の悪党、手に髑髏を執り血を其の掌に塗らん。共に相殺害せん。是くの如きの悪の衆生の中に、我、今、菩提樹下に出世して、初めて正覚を成れり。提謂・波利の諸の商人の食を受けて、彼等が為の故に、此の閻浮提を以て、天・龍・乾闥婆・鳩槃荼・夜叉等に分布せしむ。護持養育の故に。

 是れを以て大集十方所有の仏土一切無余の菩薩摩訶薩等、悉く此に来集せん。乃至、此の娑婆仏土に於いて、其の処の百億の日月・百億の四天下・百億の四大海・百億の鉄囲山・大鉄囲山・百億の須弥山・百億の四阿修羅城・百億の四大天王・百億の三十三天、乃至百億の非想非非想処、是くの如きの数を略せり。娑婆の仏土、我、是の処にして仏事を作す。乃至、娑婆仏土の所有の諸梵天王及び諸の眷属、魔天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・帝釈天王・四大天王・阿修羅王・龍王・夜叉王・羅刹王・乾闥婆王・緊那羅王・迦楼羅王・摩睺羅伽王・鳩槃荼王・餓鬼王・毘舎遮王・富単那王・迦吒富単那王等に於いて、悉く将に眷属として此に大集せり。法を聞かんが為の故に。乃至、此に娑婆仏土の所有の諸の菩薩摩訶薩等及び諸の声聞、一切、余無く悉く此に来集せり。聞法の為の故に。我、今、此の所集の大衆の為に、甚深の仏法を顕示せしむ。復た世間を護らんが為の故に、此の閻浮提所集の鬼神を以て分布安置す。護持養育すべし」と。

 爾の時に世尊、復た娑婆世界主大梵天王に問うて言わく、「過去の諸仏、此の四大天下を以て、曾て誰に付嘱して護持養育を作さしめたまうぞ」と。

 時に娑婆世界の主大梵天王言さく、「過去の諸仏、此の四天下を以て、曾て、我及び憍尸迦に付嘱したまえりき。護持を作さしめて、我、失有りや不や。己が名及び帝釈が名を彰す。但、諸余の天王及び宿・曜・辰を称せしむ。護持養育すべしと。」

 爾の時に娑婆世界主大梵天王及び憍尸迦帝釈、仏足を頂礼して是の言を作さく、「大徳婆伽婆、大徳修伽陀。我今、過を謝すべし。我、小児の如くして愚痴無智にして、如来の前にして自ら称名せざらんや。大徳婆伽婆。唯願わくは容恕したまえ。大徳修伽陀。唯願わくは容恕したまえ。諸来の大衆。亦願わくは容恕したまえ。我、境界に於いて言説教令す。自在の処を得て護持養育すべし。乃至、諸の衆生をして善道に趣かしめんが故に。我等、曾、鳩留孫仏のみもとにして、已に教勅を受けたまわりて、乃至、三宝の種、已に熾然作らしむ。拘那含牟尼仏・迦葉仏の所にして、我、教勅を受けたまわりしこと、亦是くの如し。三宝種に於いて、已に勤にして熾然ならしむ。地の精気・衆生の精気・正法の味醍醐の精気、久しく住し増長せしむるが故に。亦我が如きも、今、世尊の所にして、己が境界に頂受し教勅して言説教令す。自在の処を得て、一切闘諍・飢饉を休息せしめ、乃至、三宝の種、断絶せざらしむるが故に、三種の精気、久住して増長せん。故に悪行の衆生を遮障して、行法の衆生を護養するが故に、衆生をして三悪道を休息せしめ三善道に趣向するが故に、仏法をして久しく住せんことを得しめんが為の故に、勤に護持を作す」と。

 仏の言わく、「善いかな、善いかな、妙丈夫。汝、是くの如くなるべし」と。

 爾の時に仏、百億の大梵天王に告げて言わく、「所有の行法、法に住し法に順じて悪を厭捨せん者は、今悉く汝等が手の中に付嘱す。汝等賢首、百億の四天下、各各の境界に於いて言説教令す。自在の処を得て、所有の衆生、弊悪・麁獷・悩害、他に於いて慈愍有ること無し。後世の畏を観ぜずして、刹利心及び婆羅門・毘舎・首陀の心を触悩せん。乃至、畜生心を触悩せん。是くの如き殺生を作す因縁、乃至、邪見を作す因縁、其の所作に随いて非時の風雨あらん。乃至、地の精気・衆生の精気・正法の精気、損減の因縁を作さしめば、汝、遮止して善法に住せしむべし。

 若し衆生有りて、善を得んと欲わん者、法を得んと欲わん者、生死の彼岸に度せんと欲わん者、檀波羅蜜を修行すること有らん所の者、乃至、般若波羅蜜を修行せん者、所有の行法、法に住せん衆生及び行法の為に事を営まん者、彼の諸の衆生、汝等、当に護持養育すべし。

 若し衆生有りて、受持し読誦して、他の為に演説し種種に経論を解説せん。汝等、当に彼の諸の衆生と念持方便して堅固力を得べし。所聞に入りて忘れず、諸法の相を智信して生死を離れしめ、八聖道を修して三昧の根相応せん。

 若し衆生有りて、汝が境界に於いて法に住せん。奢摩他・毘婆舎那、次第方便して諸の三昧と相応して勤に三種の菩提を修習せんと求めん者、汝等、当に遮護し摂受して、勤に捨施を作して乏少せしむること勿るべし。

 若し衆生有りて、其の飲食・衣服・臥具を施し、病患の因縁に湯薬を施せん者、汝等、当に彼の施主をして五利増長せしむべし。何等をか五とする。一には寿増長せん。二には財増長せん。三には楽増長せん。四には善行増長せん。五には慧増長するなり。汝等、長夜に利益安楽を得ん。是の因縁を以て、汝等、能く六波羅蜜を満てん。久しからずして一切種智を成ずることを得ん。」

 時に娑婆世界主大梵天王を首として、百億の諸梵天王と共に咸く是の言を作さく、「是くの如し、是くの如し。大徳婆伽婆。我等各各に、己が境界・弊悪・麁獷・悩害に於いて、他に於いて慈愍の心無く、後世の畏を観ぜざらん。乃至、我、当に遮障し、彼の施主と五事を増長すべし」と。

 仏の言わく、「善いかな、善いかな。汝、是くの如くなるべし。」

 爾の時に復た一切菩薩摩訶薩・一切諸大声聞・一切天・龍、乃至一切人・非人等有りて、讃じて言さく、「善いかな、善いかな、大雄猛士。汝等、是くの如き法、久しく住することを得、諸の衆生をして悪道を離るることを得、速やかに善道に趣かしめん」と。

 爾の時に世尊、重ねて此の義を明らかならんと欲しめして、偈を説きて言わく、

我、月蔵に告げて言わく、此の賢劫の初めに入りて、
鳩留仏、梵等に四天下を付嘱したまう。
諸悪を遮障するが故に、正法の眼を熾然ならしむ。
諸の悪事を捨離し、行法の者を護持し、
三宝の種を断たず、三精気を増長し、
諸の悪趣を休息し、諸の善道に向かえしむ。
拘那含牟尼、復た大梵王・
他化・化楽天、乃至四天王に嘱したまう。
次後に迦葉仏、復た梵天王・
化楽等四天・帝釈・護世王・
過去の諸の天仙に嘱したまう。諸の世間の為の故に、
諸の曜宿を安置して、護持し養育せしめたまえり。
濁悪世に至りて、白法尽滅せん時、
我、独覚無上にして、人民を安置し護らん。
今、大衆の前にして、数数、我を悩乱せん。
当に説法を捨つべし。我を置きて護持せしめよ。
十方の諸の菩薩、一切悉く来集せん。
天王も亦、此の娑婆仏国土に来たらしめん。
我、大梵王に問わく、誰か昔護持せし者と。
帝釈・大梵天、余の天王を指示す。
時に釈・梵王、過を導師に謝して言わまく、
我等、王の処の所にして、一切の悪を遮障し、
三宝の種を熾然ならしめ、三精気を増長せん。
諸悪の朋を遮障して、善の朋党を護持せしむと。」已上抄出

(化身土巻 - 末 は続く)

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