【仏教用語/人物集 索引】

『伝光録』第四祖。優婆毱多尊者。

投稿日:2004年1月12日 更新日:

【本則】

第四祖。優婆毱多尊者。執事和修尊者三載。遂為落髮作比丘。尊者因問曰。汝身出家耶心出家耶。師曰。実是身出家。尊者曰。諸仏妙法豈拘身心。師乃大悟。

【機縁】

師は吒利国の人なり。また優波崛多と名く。姓は首陀。十五歳より和修尊者に参ず。十七歳にして出家し。二十二歳にして証果す。行化して摩突羅国にいたる。得度の者はなはだおヽし。これによりて魔宮震動し。波旬愁怖す。証果の人をうることに。四指の籌を石室に投ず。その室縦十八肘。広十二肘。充満其間。一肘は二尺なり。かの一生のあいだの得度しゑたる籌をばもて茶毘す。得度の人おヽきこと。あだかも如来在世のごとし。ゆゑに世挙つて号して無相好仏といふ。波旬いきどふりをなして。入定の時節をうかヾひ。遂にその魔力をつくして。もて正法を害せんとす。尊者すなはち三昧に入て。その所由を観ず。波旬またうかごふて。密に瓔珞を持して。これを頚にかく。ときに尊者またかれを伏せんとおもふ。定より起て。すなはち人狗蛇の三屍を取て。化して華鬘となす。軟言をもて波旬を慰諭して曰。汝ぢわれに瓔珞を与ふ。甚だこれ珍妙なり。われ華鬘あり。もてあい報酬奉せん。波旬大に喜て。延頚てこれを受く。すなはち変じて三種の臭屍となる。蟲蛆壊爛せり。波旬厭悪して。大ひに憂悩を生ず。おのが神力をつくして。不得捨。不得解。不能移動。乃昇六欲天。告諸天主。又詣梵天。求其解脱。彼各告曰。十力弟子所作神変。我輩凡陋。何能去之。波旬曰。然則奈何。梵王曰。汝可帰心尊者。即能除断。乃為説偈。令其迴向曰。若因地倒還因地起。離地求起終無其理。還依十力弟子。可求解脱。波旬受教已。即下天宮礼尊者足。哀露懺悔。尊者曰。汝自今後。於如来正法更作嬈害否。波旬曰。我誓迴向仏道永断不善。尊者曰。若然者汝可自唱口言帰依三宝。魔主合掌三唱。華鬘悉除。

【拈提】

かくのごとく仏法威験を施し。あだかも如来在世のごとし。十七歳落髮のきざみ和修問曰。汝身出家するや。心出家するや。それ仏家もとより身心の二出家あり。いはゆる身出家すといふは。恩愛をすて家郷をはなれて。髮をそり衣をそめ。奴婢をたくはへず。比丘となり比丘尼となり。十二時中弁道しきたる。ゆへに時としてむなしく過ることなふして。ほか所願なし。ゆへに生をもよろこばず。死をもおそれず。心如秋月皎潔。眼如明鏡無翳。心を求めず。性をのぞまず。聖諦なをなさず。いはんや世執をや。かくのごとくし来て。凡夫地にもとどまらず。賢聖位にもかかはらず。うたヽ無心道人たり。これすなはち身出家人なり。いはゆる心出家といふは。髮をそらず衣をそめず。たとひ在家にすみ。塵労にありといへども。蓮の泥にそまず。玉のちりをうけざるがごとし。たとひ因縁あり妻子ありとも。芥のごとく塵の如く覚して。一念も愛心なく。一切貪著することなく。月の空裡にかヽるがごとく。玉の盤上に走るに似て。鬧市中にして閑者をみ。三界の中にして劫外をあきらめ。煩悩を断除するも病なりとしり。真如に趣向するも邪なりとあきらむ。涅槃生死これ空華なり。菩提煩悩ともに管せず。これすなはち心出家人なり。ゆへに身出家耶心出家耶と問あり。しかもかくのごとくなからん出家はこれ出家にあらず。ゆへにこの問をなし来る。しかるに毱多答て曰。実に是身出家すと。ここに心を存せず。性と説かず。玄を談ぜず。たヾ四大五蘊の身まさにこれ出家することをしる。不運にして至り得る。故に如意足なることを明らむ。不求にして得たり。ゆへに不可得を明らむ。如是なるゆへに。実に身出家すといふ。然れども諸仏の妙法。這箇の見解をなすべからず。ゆへに和修指説するにいはく。諸仏実にこれ身出家するにあらず。心出家するにあらず。四大五蘊をもてみるべきにあらず。理性玄妙をもて証すべきにあらず。ゆへに聖凡ともに解脱し。身心おなじく脱落し来る。虚空の内外なきがごとく。海水の表裡なきに似たり。たとひ幾許の妙理。無量の法門。千差万別なりといへども。たヽ這の事をのみとき来る。然れば唯我独尊を仏といふべからず。無来無去といふべからず。誰か父母未生といひ。空劫以前といはん。このところにいたりて。生不生を超越し。心不心を解脱す。器に随ふ水のごとく。物による空のごとし。とれども手にみつることなく。さぐれども跡をうることなし。すなはちこれ諸仏の妙法なり。このところにいたりて。毱多存することなく。和修も起ることなきゆへに。動静をもてせず。去来をもてせず。たとひ是非あり彼我ありとも。水の底の声のごとく。空の中の端なきに似たり。しかも一度覚触せざれば。千万の法門。無量の妙理も徒に業識流注となる。如是指説するところ。毱多尊者たちまち大悟す。あだかも青天に忽雷の霹靂せるがごとく。大地に猛火の発生するに似たり。迅雷一度ふるふて。毱多耳根を断ずるのみにあらず。すみやかに命根を喪し。猛火たちまちやけて。諸仏の法門祖師の頂。ことごとく灰燼となりおはりぬ。恁麼の灰燼あらはれて。毱多尊者と号す。かたきこと石のごとく。くろきこと漆のごとし。幾回か人の本色を失し。全身を打碎して。徒に籌をなげて空のかずをとり。空をやきて空のあとをのこす。今日大乗の兒孫。あとを雲外にたづね。言を青天につけんとおもふ。諸人要聞麼。

【頒古】

家破人亡非内外。身心何処隠形来。

▶ 次に進む(提多迦尊者)

◀ 前に戻る(商那和修尊者)

🏠 『伝光録』の最初に戻る

※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。

あなたに おすすめページ💡 戒名授与 1万円のみ(故人/生前/法名授与も)

<< 戻る

-仏教を本気で学ぶ
-,



Copyright © 1993 - 2024 寺院センター All Rights Reserved.