【仏教用語/人物集 索引】

『伝光録』第三祖。商那和修尊者。

投稿日:2004年1月12日 更新日:

【本則】

第三祖。商那和修尊者。問阿難陀尊者。何物諸法本不生性。阿難指和修袈裟角。

【機縁】

又問、何物諸仏菩提本性。阿難又取和修袈裟角引。時和修大悟師は摩突羅国の人なり。梵には商諾迦といひ、此には自然服といふ。和修うまれしとき、衣をきてうまる。それよりこのかた、夏は涼き衣となり、冬は暖かなる衣となる。すなはち発心出家せしとき、俗服おのづから袈裟となる。仏在世蓮華色比丘尼のごとし。たヾ今生恁麼なるのみにあらず。和修むかし商人たりしとき、百仏に百丈をたてまつる。それよりこのかた、世々生々のあひだ自然服を著す。おヽよそ一切の人、本有をすて当有にいたらざる間を、名づけて中有とす。そのときのかたち悉くみな衣をきず。今和修尊者のごときは、中有にしても衣を著す。また商那和修といふは、西域の九枝秀といふ草の名なり。聖人うまるヽとき、この草浄潔の地に生ずるなり。和修うまれしとき、この草また生じき。これによりて名とす。在胎六年にしてうまれき。むかし世尊一の青林を指して阿難につげて曰く、この林地を優留荼となづく。われ滅後一百年に比丘商那和修といふものあらん。このところにして妙法輪を転ぜんと。一百年後、いま師こヽにうまる。つゐに慶喜尊者の付嘱をうく。すなはちこの林にとヾまる。法輪を転じて火龍を降す。火龍帰伏して、この林をたてまつる。これ実に世尊の来記たがはず。然るに和修尊者はもと雪山の仙人なり。阿難尊者に投じて、いまの因縁あり。いはゆる何物是諸法本不生性と、実にこれ人所未問なり。和修ひとりとふ。たれか諸法本不生性なからん。然れども有ことをしらず、またとふことなし、なんとしてか不生の性といふ。万法諸法ことごとくこの処より出生すといへども、この性つゐに出生するものなし。ゆゑに不生の性といふ。故にことごとく本不生なり。山これ山にあらず。水これ水にあらず。ゆへに阿難和修の袈裟角をさす。

【拈提】

それ袈裟といふは梵語。此には壊色といひ、不生色といふ。実にこれ色をもてみるべきにあらず。またかみ諸仏よりしも一切の螻蟻蚊虻にいたるまで、その依報正報ことごとくこれ色なり。一辺の所見かくのごとし。然れどもすなはち、またこれ声色にあらず。ゆへに三界のいづべきなく、道果の証すべきなし。かくのごとく会すといへども、和修再問、何物諸仏菩提の本性なると。曠大劫よりこのかた、錯らざること恁麼なりといへども、一度び有ることをしらざれば、徒に眼にさへらる。ゆへに諸仏出生の処を明らめんと、恁麼にとふ、よぶにしたがひて応じ、たヽくにしたがひていづることをしらしめんとして。ことさらに和修の袈裟の角をとりてひきしらしむ。時に和修大悟す。
実にそれ無量劫よりこのかた。あひ錯らざることかくのごとくなりといへども、一度築著せざるがごときは、自己の諸仏の智母なることをも知るべからず。これによりて諸仏番々出世し、祖師代々指説す。かつて一法の人に授くべきなく、さらに一法の他に受くべきなしといへども、自面にさぐりて鼻孔にさはるがごとくなるべし。参禅は須自参悟、さとりおはりてはにあふべし。もし人にあはずんば、徒に依草附木なり。実に参禅いたづらにすべからず。一生むなしくすべからざること。今の和修の因縁をもてあきらめつべし。徒に自然天然の見を発すべからず。己見旧見をさきとすべからず。またおもふべし。仏祖の道は人をゑらび機をゑらぶ。われらがたへるところにあらずと。恁麼の所見実にこれ愚劣の中の愚劣なり。昔人いづれかこれ父母所生の身にあらざる。いづれかこれ恩愛名利の人ならざりし。然れども一度すでに参ぜしとき、かならず参徹しき。ゆへに天竺よりわが朝にいたるまで、正像末の三時異なるとも、証果の聖賢山をしめ海をしむ。然れば汝等諸人、見聞を具足すること、すでに古人に異ならず。たとひいづれのところにいたるとも、ことごとくいふべし。汝等この人なりと。迦葉・阿難と四大・五蘊かはれるところなし。何によりてか道におきて古人にかはるべき。たヾ究理弁道せざるによりて、徒に人身を失却するのみにあらず。つゐに己れあることをしらず。かくのごとくむなしくすべからずと相承して、阿難もかさねて迦葉を師とし、阿難陀また和修を接し、師資の道伝通す。かくのごとく流通しきたる。正法眼蔵涅槃妙心仏の在世と異なることなし。ゆへに仏生国にうまれざることをうらむることなかれ。仏在世にあはざることをかなしむことなかれ。昔し厚植善根、深く般若の良縁をむすぶ。これによりて大乗の会裡にあつまる。実にこれ迦葉と肩をならべ、阿難と膝を交ゆるごとし。然れば一日は賓主たりとも、終身すなはち仏祖たらん。みだりに古今の情に封ぜらるヽことなかれ。声色の法にとヾこふることなかれ。夜間をも日裡をも、むなしくわたることなかれ。子細に弁道功夫して、古人の徹処にいたり。今時の印記をうくべし、適来の因縁をあかさんとおもふに。また卑頌あり。要聞麼。

【頒古】

万仭巌上無源水。穿石払雲湧沸来。散雪飛花縦乱乱。一條白練絶塵埃。

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