仏舎利とは、お釈迦様(ブッダ)がクシナガラで入滅し荼毘(だび)に付された際の遺骨のことです。また、その際に出た灰をも含まれる場合があります。舎利は梵語ではシャリーラといい「遺骨」「遺体」「肉体」を意味します。
荼毘に付された後、その遺骨を分けて欲しいと7種族が申し出ました。しかし、クシナガラに住むマッラ族は「我々の住む土地でブッダはお亡くなりになられたのだから、一部分をも分け与えない」と言いました。それに対して、ドーナ・バラモン(コーリヤ族)が次のようなことを言いました。
「我らのブッダは耐え忍ぶことを説くかたでありました。最上の人の遺骨を分配する為に争うのはよくありません。我らはともに喜び合って遺骨を八つの部分に分けましょう。多くの人々はブッダを信じています。」
その言葉によってドーナ・バラモンが仏舎利を平等に八つに分けることになりました。分けられた遺骨は、マガダ国、リッチャヴィ族、釈迦族、ブリ族、コーリヤ族、ヴェータディーパのバラモン、パーヴァーのマッラ族、クシナガラのマッラ族の八つの種族に平等に分け与えられました。そして、全ての遺骨が入っていた瓶はドーナ・バラモンに与えられました。
全ての遺骨が分配された後、モーリヤ族が遺骨の分配を求めてきました。すでに分配されていたので、彼らは残されていた灰を持ち帰りました。八つの遺骨と一つの瓶と一つの灰のそれぞれが各地に持ち帰られ崇拝されました。後にそれが、さらに細かく分けられました。
お釈迦様の遺骨である仏舎利を納めるために建造された塔を仏塔といいますが、梵語ではストゥーパといい「塚」を意味します。ブッダが火葬された跡に建てられたと伝えられるラーマバール塚(荼毘塚)はクシナガラにあります。その近くにはブッダが最後の沐浴をしたヒラニヤヴァティー川も流れています。なお、「塔」の名は、ストゥーパを音訳した卒塔婆(そとば)・塔婆(とうば)を略したものです。
世界最古の木造仏塔は法隆寺の五重塔で、その基壇中央部にある心柱の基部には仏舎利容器が納められています。仏舎利は瑠璃の小壷に納められ、これを純金の器に入れ、さらに銀器に入れて銅碗の中に置き、瑠璃小玉葡萄鏡と共に孔中に安置し、銅板のふたがされています。これは仏舎利についての一例ですが、詳細が分からないことが多い中で貴重な例だと考えられます。
(ラーマバール塚・荼毘塚・クシナガラ)
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