写経とは、筆・硯・墨・文鎮などを使って仏教経典を書写することです。また、その書写されてできた経典のことを指します。ただし、状況によっては、写経道具として筆ペンやえんぴつ、ボールペンを可とする場合もあります。写経された経典は寺院や神社に納経されることが多いです。
刷技術が発展していなかった時には、経典を広めるために行われました。また、修行・研究・教育する為に行われました。次第に、個人の信仰や祈願、供養のために行われるようになりましたが、現代においては、写経することによって精神の安定を得たいという目的にする人が増えています。
『妙法蓮華経如来神力品』には「この経を受持し、読誦し、解説し、書写し、説の如く修行すれば、よく大願を成就す」とあるように、写経の目的は単に経典を広めるばかりではなく、成仏、功徳の思想に基づいて書写されるようになりました。
よく写経に使われる経典は『般若心経』です。比較的に短い経典であることから、書きやすい経典として現在でもよく使われています。
中国の六朝時代(りくちょうじだい・222年~589年)に写経が定型化され、隋・唐のころに盛んに写経が行われるようになりました。
日本では、日本書紀に「書生を聚めて、始めて一切経を川原寺に写す」とあり、飛鳥四大寺に数えられる川原寺(廃寺)で写経が行われた記録が日本で一番古いものとされています。聖武天皇のころには写経司を任命し、書写して収蔵し、諸国の国分寺などに配布されました。
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