【仏教用語/人物集 索引】

『伝光録』第四十四祖。投子和尚。

投稿日:2004年1月12日 更新日:

【本則】

第四十四祖。投子和尚。参円鑑。鑑令看外道問仏不問有言不問無言因縁。経三載一日問曰。汝記得話頭麼。試挙看師擬対。鑑陽掩其口。師了然開悟。

【機縁】

師諱義青。青社李氏子。七齡頴累。往妙相寺出家。試経十五得度。習百法論。未幾歎曰。参祗塗遠。自困何益。乃入洛聴華厳。義如貫珠。嘗読諸林菩薩偈至即心自性。猛省曰。法離文字。寧可講乎。即棄游宗席。時一円鑑禅師居会聖巌。一夕夢畜青色鷹為吉徴。屆且師来。鑑礼延之。令看外道問仏話乃至師了然開悟。遂礼拝。鑑曰。汝妙悟玄機耶。師曰設有須吐却。時資侍者在傍曰。青華厳今日如病得汗。師回顧曰。合取狗口。若更忉忉我即便嘔。自此復経三年。鑑時出洞下宗旨示之。悉皆妙契。附以大陽頂相皮履布直綴属曰。代吾続某宗風。無久滯此。善宜護持。遂書偈送曰。須弥立大虚。日用輔而転。群峯漸倚他。白雲方改変。少林風起叢。曹溪洞簾卷。金鳳宿龍巣。宸苔豈車碾。

【拈提】

如来の正法輪東西密密として伝来し。五家森森として唱へ。かまびそしヽ。関捩まちまちにして。家風いさヽか異なり。鳳凰あり。龍象あり。ともに群せず。いづれも劣ならず。青華厳・機語大陽に契ふ。まさにこれ洞家の兒孫といヽつべし。遠録公は宗旨を葉縣につげり。是正に臨濟下の流なり。龍巣に鳳子を止むべからず。ゆへにをくりて令依円通秀禅師。至彼無所参問。唯嗜睡而已。執事白通曰。堂中有僧。日睡。当行規法。通曰。是誰。曰執事青上座。通曰。未可。待与按過。通即曳杖入堂見師正睡。乃撃床呵曰。我這裏無閑飯与上座喫了打眠。師曰。和尚教某何為。通曰。何不参禅去。師曰。美食不中飽人喫。通曰。争大有人。不肯上座。師曰。待肯堪作甚麼。通曰。上座会見甚麼人来。師曰。浮山。通曰。怪得恁麼頑懶。遂握手相笑帰方丈。由是道声籍甚。初住白雲。次遷投子。是誌五灯会元処也。又続古尊宿録曰。師鑑禅師に得法す。円鑑はさきに大陽明安大師に参ず。機語相契。卒に宗旨をつたへ。皮履布直裰を附せんとす。円鑑辞して曰く。すでにさきに得処あり。安歎して曰く。わが一枝人の伝るなし。時に円鑑もふして曰く。洞上の宗風尽て挙しがたし。和尚尊年にまします。もし人のつたふるなくば。某甲まさに衣信を持して。和尚の為に永く人に転じて相付嘱せん。安ゆるして曰く。われ偈を書してとヽむ。証明とせよ。すなはち書していはく。陽広山頭草。憑君待價燉。異苗繁茂処。深密固霊根。その末にいはく。得法のもの潜衆十年。まさに可闡揚。のちに遠与師あひあふ。洞下の宗旨大陽の真像衣信。偈をもて付嘱していはく。吾にかはりて大陽の宗風をつげと。後果して十年にまさに出世し。大陽につぐ。上に陽広山といふは大陽山なり。異苗繁茂処とは今の青禅師なり。價燉といふは円鑑をいふなり。来記たかはず終に出世し。拈香曰。此一弁香。大衆還知来処麼。非天地所産。非陰陽所成。威音王以前不落諸位。然灯之後七仏伝来直至曹谿。分派大夏。山僧向治平初。在浮山円鑑禅師。親手伝得寄附其宗頌。委証明。慈旨曰。代吾続大陽宗風。山僧雖不識大陽禅師。浮山宗法識人。以為嗣続如是。更敢不違浮山和尚法命付嘱之恩。恭為郢州大陽山明安大和尚。何故父母諸仏非親。以法為親。従爾開演大陽宗風。即得芙蓉楷禅師嗣続。夫浮山円鑑禅師。臨濟和尚七代。所謂葉縣帰省和尚嫡嗣也。昔日投参嵩交和尚出家。幼為沙弥。見僧入室請問趙州庭柏因縁嵩詰其僧。傍明。参諸師皆相契。謁汾陽葉縣皆蒙印可。卒葉縣之嫡嗣。然又太陽に参す。大陽また機縁あひかなふ。故に宗旨をつたゑんとせしに。法遠辞して曰く。さきに得処ありと。因てみづから伝受せずといへども。大陽卒に人なきゆへに。寄付して断絶せず。後にその機をゑて密に付す。こヽにいたりてしるべし。青原南嶽もとよりへだてなしといふことを。実に大陽の一宗地に落なんとせしを悲て。円鑑代て大陽の宗旨をつたふ。然るを自家の門人は曰く。南嶽の門下は劣なり。青原の宗風は勝れりと。又臨濟門下は曰く。洞山の宗旨はすたれたりき。臨濟門下にたすけらると。いづれも宗旨くらきがごとし。自家他家もし実人ならば。ともにうたがふべからず。ゆへいかんとなれば。青原・南嶽ともに曹谿の門人。牛頭の両角のごとし。ゆへに薬山は馬祖にあきらめて石頭につぐ。丹霞も馬祖に明らめて却て石頭につぎヽ。実に兄弟骨肉ともに勝劣なし。然るにたヾわが祖師を称して嫡嗣とし。余を旁出とす。しるべし臨濟門下も尊貴なり。自家門下も超邁なり。もし臨濟にいたらざるところあり。劣なるところあらば。円鑑すでにもて大陽につぐべし。若し大陽劣なるところあり。あやまる処あらば。円鑑なんそ投子に付せん。然も諸人者五家七宗と対論することなく。ただまさにこヽろをあきらむべし。これすなはち諸仏の正法なり。あに人我をもてあらそはんや。勝負をもて弁ずべからず。然るに洪覚範作せる石門林間録曰。古塔主去雲門之世無慮百年而称其嗣。青華厳未始識大陽。特以浮山遠公語。故嗣之不疑。二老皆以伝言行之自若。其於己甚重。於法甚軽。古之人於法重者。永嘉・黄檗是也。永嘉因閲維摩経悟仏心宗。而往見六祖曰。吾欲定宗旨也。黄檗悟馬祖之意而嗣百丈。いまの説を考るに。洪覚範なをしらざるところあるに似り。ゆへいかんとなれば。大陽の仏法円鑑に寄付す。あにうたがふべけんや。いはんや人をゑん。その証拠をのこす。末後来記におよぶこともたがはず。もし円鑑にあへるをうたがふべくんば。大陽つたへけるともうたがふべし。祖師訓訣し来るとここ。胡乱の世情に不可比。世人すら実ある人の言を証拠とすることおほし。いはんや円鑑知法の人として大陽面授あり。機語相契。覚範は投子円鑑の言をうたがはざるとそしる。円鑑すでに葉縣の嫡嗣として。臨濟の正流なり。古人これをうたがはず。仏祖あに妄称あるべけんや。累祖の印記をうくるによりて尊重し来る。なにをもてか投子円鑑をうたがふべきや。大陽今に存せるがごとし。仏祖の命脈通じてはじめなくをはりなし。はるかに三世を超越し。まのあたり師資たがはず。悉くこれ打成一片なり。葫蘆藤種の葫蘆をまつふがごとし。遂に別物なしといふべし。これ大陽・円鑑および投子にいたるまで。大陽一人にし来る。乃至釈迦一人連綿として今日にをよべり。仏祖堂奧の事かくのごとし。あに円鑑をうたがふべけんや。もし円鑑をうたがふべくば。迦葉なんぞ釈迦をうたがはざる。二祖なんぞ達磨をうたがはざる。祖師あざむくべからず。仏法に私なきことをたつとぶゆへに嗣続し来り。大陽も円鑑をたのむ。投子も円鑑をうやまふて。命をうたがはず。法を重くす。参師ともに曩祖の宗旨を遺落せず。後代にひさしく洞山の家風を属累し来る。実にこれわが家の奇特。仏法の秘蔵なり。いまも現前その器をゑざらん時。達人につけをくこともあるべきなり。洪覚範委悉にせず。青華厳を古塔主に例す。いくばくのあやまりぞ。夫れ薦福承古を古塔主といふ。棲止雲居弘覚禅師塔前。雲門より後。百年に一出たり。わづかに雲門の言に解するところあるをもて。すなはち曰く。黄檗の見処不円。古今あにへだつべけんや。馬祖の言をあきらめながら。馬祖につがず。われ雲門の言をあきらむ。すべからく雲門につぐべしといふて。終に雲門につぐと称す。諸録悉く雲門の嗣にのす。これ録者のあやまりなり。わらひぬべし。香厳撃竹にあきらむ。なんぞ翠竹につがざる。霊雲桃花にあきらむ。なんぞ桃華につがざる。あはれむべし。承古は仏祖屋裏。嗣承あることをしらず。若覚範も義青和尚をうたがはヾ。屋裏の相承をしらざるがごとし。ゆへになんぢおのれにをきてかろく。法にをきていたらずといふべし。然れば林間録の記もちゆべからず。適来の因縁は外道ほとけにとひたてまつる。不問有言不問無言と。尋常説黙にをちざる道なるがゆへに。世尊良久しまします。これ隠顯にあらず。自他にあらず。内外なく正偏なし。あだかも虚空のごとく。海水のごとくなることをあらはししめされしに。外道忽ちに会し。礼拝して曰く。世尊大慈大悲。開我迷雲令我得入といひてさりぬ。実に片雲つきて虚天いさぎよく。風波消して巨海しづかなりしがごとくなることをゑたりき。然るを阿難しらずして。仏にとひたてまつりて曰く。外道有何所証而言得入。仏曰。如世良馬見鞭影而行。実にこれ祖師の機関。したしく庫蔵を打開せしむるに。一機をかへさず。一言をいださざるところに覚了しきたり。明徹にもてゆく。鞭影をみて正路にいたるがごとし。然れば非思量のところにとヾまらず。なをまなこをつけてみよ。無言説のところにとヾこふらず。更に心をあきらめよ。この良久のところ。人おほくあやまりて会す。あるは一念不生にして全体現ず。離名字相にして独露し来る。雲つき山あらはるヽがごとく。突兀としてものによらず。正当恁麼なりと。従前知解を発して。向外馳求せしに比すれば。すこしき休歇せるに似たれども。皮肉いまだ亡ぜず。識陰なをさらず。このところに相応せんとおもはば。まさに絶氣息。命根を断じ去てみよ。なにものかあらはるるとかせん。あに非思量なりとせんや。すでになんともすべからず。いかんぞ黙黙然なりとせん。たヾ一息断じ。両眼とづるのみにあらず。百骸潰散じて。皮肉あとをとどめざるところにむかひてみよ。明暗に属せず。男女にあらざる一物あり。いかんがこの道理を通ぜん。

【頒古】

嵯峨万仭鳥難通。剣刃軽氷誰履踐。

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※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。

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