【仏教用語/人物集 索引】

『伝光録』第一祖。摩訶迦葉尊者。

投稿日:2004年1月12日 更新日:

【本則】

第一祖。摩訶迦葉尊者。因世尊拈華瞬目。迦葉破顏微笑。世尊曰。吾有正法眼蔵涅槃妙心。付嘱摩訶迦葉。

【機縁】

摩訶迦葉尊者。姓は婆羅門、梵には迦葉波。こヽには飲光勝尊といふ。尊者生るるとき、金光室にみちて、光りことごとく尊者の口にいる。因て飲光と称す。その身金色にして、三十一相を具足せり。ただ烏瑟白毫のかげたるのみなり。多子塔前にしてはじめて世尊にあひたてまつる。世尊善来比丘とのたもふに、鬚髮すみやかにおち、袈裟体にかかる。すなはち正法眼蔵をもて付嘱し、十二頭陀を行じて、十二時中むなしくすごさず。ただ形ちの醜悴し、衣の麁陋なるをみて、一会ことことくあやしむ。これによりて処処の説法の会ごとに、釈尊座をわかち迦葉を居らしむ。然しより衆会の上座たり。ただ釈迦牟尼仏一会の上座たるのみにあらず、過去諸仏の一会にも不退の上座たり。しるべし、これ古仏なりといふことを。ただ諸の声聞の弟子の中に排列することなかれ。しかるに霊山会上、八万衆前にして世尊拈華瞬目す。みな心をしらず黙然たり。時に摩訶迦葉独破顏微笑す。世尊曰、吾有正法眼蔵涅槃妙心円明無相法門、ことごとく大迦葉に付嘱すと。

【拈提】

いはゆるかの時の拈華は祖祖単伝しきたりて、みだりに外人をしてしらしむることなし。ゆへに経師・論師おおくの禅師のしるべきところにあらず。実にしりぬ、その実処をしらざることを。しかも恁麼なりといへども、恁麼の公案霊山会上の公案にあらず。多子塔前にして付嘱せし時のことばなり。伝灯録・普灯録等にのするところは、これ霊山会上の説といふこと非なり。最初に仏法を付嘱せしとき如是の式あり。ゆへに仏心印を伝ふる祖師にあらされば、かの拈華の時節をしらず。またかの拈華をあきらめず。諸禅徳子細に参到し、子細に見得して、迦葉の迦葉たることをしり、釈迦の釈迦たることをあきらめ、ふかく円明の道を単伝すべし。

拈華は暫らくおく、かの瞬目せしところ、人人あきらめきたるべし。汝等よのつね揚眉瞬目すると。またこれ瞿曇の拈華瞬目せしと一毫髮もへだたらず。汝等語話微笑せしと。摩訶迦葉破顏微笑せしと。全く毫髮も異なることなし。然れどもかの揚眉瞬目せしものをあきらめざれば、西天に釈迦あり。迦葉あり。自心に皮肉骨髄あり。許多の眼華、多少の浮塵、無量劫来未会解脱、未来劫もまた沈淪すべし。もし一度かの主人公を識得せば、摩訶迦葉まさに汝諸人の鞋裏にありて動指することをゑん。しらずや、瞿曇揚眉瞬目せしところに、瞿曇すなはち滅却しおはることを。迦葉破顏せしところに、迦葉すなはち得悟しきたることを。これすなはち吾有にあらずや。正法眼蔵却て自己に付嘱しおはりぬ。ゆへに喚て迦葉とすべからず。喚て釈迦となすべからず。かつて一法の他にあたふるなく、一法の人にうくるなく、これを喚で正法とす。かれをあらはさんがために、華を拈じ不変なることを知らしめ、破顏して長齡なることをしらしむ。恁麼に師資相見、命脈流通す。円明了知不渉心念、まさしく意根を坐断して鶏足山にいり、はるかに慈氏の下生をまつ。ゆへに摩訶迦葉いまに入滅せず。

諸人もし親く学道して子細に参徹せば、迦葉不滅のみにあらず。釈迦もまた常住なり。ゆへに汝等諸人、未会生より直指単伝して、亙古亙今、築著磕著す。ゆへに諸人、二千年前の昔を思慕することなかれ。ただ急に今日に弁道せば、迦葉鶏足にいらず。正に扶桑国にありて出世することをゑん。ゆへに釈迦の肉身今猶暖かに、迦葉微笑また更に新たならん。恁麼の田地にいたりゑば、汝ぢら却て迦葉につぎ、迦葉却て汝ぢらにうけん。七仏より汝ぢらにいたるのみにあらず、汝ぢらまさに七仏の祖師たることをゑん。無始無終古来今を絶して、すなはちこれ正法眼蔵付嘱有在ならん。これによりて、釈迦も迦葉の付嘱を得て、兜卒天に今に有在なり。汝ぢらも霊山会上にして、有在不変易なり。

不見道、常在霊鷲山、及余諸住処、大火所焼時、我此土安穩、天人常充満と。ただ霊山会上のみ所住処といふにあらず。あに梵・漢・本朝もまたもるることあらんや。如来の正法流転して、一毫髮も缺ぐることなし。もし然れば、この会はこれ霊山会たるべし。霊山はこれこの会たるべし。ただ諸人の精進と不精進とによりて、諸仏頭出頭沒せるのみなり。今日も頻りに弁道し、子細に通徹せば、釈尊直に出世なり。ただ汝ぢら自己不明によりて、釈尊昔日入滅す。汝ぢらすでに仏子たり、なんぞ仏をころすべけんや。ゆへに急に弁道して、すみやかに慈父と相見すべし。よのつね釈迦老漢、汝ぢらとともに行住坐臥し、汝ぢらとともに言語伺候して、一時もあひはなるることなし。恰も㔁隠峯の洞山の背にあるが如し。一生もしかの老漢をみずんば、諸人悉くみな不孝の人たらん。すでに仏子といひ、もし不孝のものたらば、千仏の手もおよばず。今日大乗の子孫、また恁麼の道理を指説せんとするに卑語あり。諸人聞かんと要すや。

【頒古】

可知雲谷幽深処。更有霊松歴歳寒。

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