スッタニパータ【第2 小なる章】5、スーチローマ

投稿日:2023年5月28日 更新日:

 わたしが聞いたところによると、ある時尊き師(ブッダ)はガヤー村のタンキク石床におけるスーチローマという神霊(夜叉)の住居におられた。そのときカラという神霊とスーチローマという神霊に言った、「かれは道の人である」と。スーチローマという神霊は言った、「かれは真の道の人であるか、あるいは似而非の道の人であるかを、わたしが知らないうちは、かれは真の道の人ではなくて、似而非の道の人である。」

 そこでスーチローマという神霊は、師のもとに至り、そうして身を師に近づけた。ところが師は身を退けた。そこでスーチローマという神霊は師にいった、「道の人よ。あなたはわたしを恐れるのか。」師いわく、「友よ。わたしはあなたを恐れているのではない。しかしあなたに触れることは悪いのだ。」スーチローマという神霊はいった、「道の人よ。わたしはあなたに質問しよう。もしもあなたがわたしに解答しないならば、あなたの心を乱し、あなたの心臓を裂き、あなたの両足をとらえてガンジス河の向こう岸に投げつけよう。」

 師は答えた、「友よ。神々・悪魔・梵天を含む世界において、道の人・バラモン・神々・人間を含む生けるものどものうちで、わが心を乱し、わが心臓を裂き、わが両足をとらえてガンジス河の向こう岸に投げつけ得るような人を、実にわたしは見ない。友よ。あなたが聞きたいと欲することを、何でも聞け。」

 そこでスーチローマという神霊は、次の詩を以て、師に呼びかけた。

270 貪欲と嫌悪とはいかなる原因から生じるのであるか。好きと嫌いと身の毛もよだつこと(戦慄)とはどこから生ずるのであるか。諸々の妄想はどこから起こって、心を投げうつのであるか?あたかもこどもらが鳥を投げすてるように。

271 貪欲と嫌悪とは自身から生ずる。好きと嫌いと身の毛もよだつこととは、自身から生ずる。諸々の妄想は、自身から生じて心を投げうつ、あたかもこどもらが鳥を投げすてるように。

272 それらは愛執から起こり、自身から現われる。あたかもバニヤンの新しい若木が枝から生ずるようなものである。それらが、ひろく諸々の執著していることは、譬えば、つる草が林の中にはびこっているようなものである。

273 神霊よ、聞け。それらの煩悩がいかなる原因にもとずいて起こるかを知る人々は、煩悩を除きさる。かれらは、渡りがたく、未だかって渡った人のいないこの激流を渡り、もはや再び生存をうけることがない。

⇒ 続きは 6、理法にかなった行い

※このページは学問的な正しさを追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるための功夫をしています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではありません。

【 第1 蛇の章 】

1、蛇
2、ダニヤ
3、犀の角
4、田を耕すバーラドブァージャ
5、チュンダ
6、破滅
7、賤しい人
8、慈しみ
9、雪山に住む者
10、アーラブァカという神霊
11、勝利
12、聖者

【 第2 小なる章 】

1、宝
2、なまぐさ
3、恥
4、こよなき幸せ
5、スーチローマ
6、理法にかなった行い
7、バラモンにふさわしいこと
8、船
9、いかなる戒めを
10、精励
11、ラーフラ
12、ヴァンギーサ
13、正しい遍歴
14、ダンミカ

【 第3 大いなる章 】

1、出家
2、つとめはげむこと
3、みごとに説かれたこと
4、スタンダリカ・バーラドヴァージャ
5、マーガ
6、サビヤ
7、セーラ
8、矢
9、ヴァーセッタ
10、コーカーリヤ
11、ナーラカ
12、二種の観察

【 第4 八つの詩句の章 】

1、欲望
2、洞窟についての八つの詩句
3、悪意についての八つの詩句
4、清浄についての八つの詩句
5、最上についての八つの詩句
6、老い
7、ティッサ・メッテイヤ
8、パスーラ
9、マーガンディヤ
10、死ぬよりも前に
11、争闘
12、並ぶ応答 ─ 小篇
13、並ぶ応答 ─ 長篇
14、迅速
15、武器を執ること
16、サーリプッタ

【 第5 彼岸にいたる道の章 】

1、序
2、学生アジタの質問
3、学生ティッサ・メッテイヤの質問
4、学生プンナカの質問
5、学生メッタグーの質問
6、学生ドータカの質問
7、学生ウバシーヴァの質問
8、学生ナンダの質問
9、学生ヘ-マカの質問
10、学生トーデイヤの質問
11、学生カッパの質問
12、学生ジャトゥカンニンの質問
13、学生バドラーヴダの質問
14、学生ウダヤの質問
15、学生ポーサーラの質問
16、学生モーガラージャの質問
17、学生ビンギヤの質問
18、十六学生の質問の結語

参考文献:「ブッダのことば」中村元訳 岩波文庫

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