烏芻沙摩明王はこの世の一切の汚れを焼きつくす神力を持つとされ、禅宗や密教では古くから東司(とうす。三黙道場の一つ。トイレ)の守護神とされ祀られている寺院は珍しくありません。そのため、烏芻沙摩明王は一般的にもトイレの守り神として有名でした。烏芻沙摩明王に祈りを捧げる時に唱える真言は「オン クロダノ ウンジャク ソワカ」です。「烏枢沙摩明王」等、違う表記もあります。
近年、その名を広く若い世代にまで浸透させるきっかけをつくったのは、植村花菜さんの作詞作曲で、彼女の幼き日におばあさんから教わった言葉が、大人になっても忘れられないという「トイレの神様」という歌が人気になったからではないでしょうか。烏芻沙摩明王を祀る寺院ではここぞとばかりに「トイレの神様がうちの寺で祀られているよ」と宣伝をはじめ、今も見かけます。
烏芻沙摩明王は、仏教と共に日本に伝わった明王ですが、もともとインドの神話に登場する火の神様「アグニ」で、梵名を「ウッチュシュマ」といいました。「烏瑟娑摩」「烏枢沙摩」とも表記される場合があります。仏教では明王(仏の知恵を身につけた偉大な人のこと)として取り入れられました。頭髪は火焔で、顔は怒りの相をあらわす憤怒相です。腕は、二臂・四臂・六臂・八臂など様々でそれぞれ輪宝・弓矢・剱・三鈷杵などの武器をもち、全身が炎につつまれています。画像を見ていただいても分かりますが、どちらか片方の足を大きく上げ、片足で立った姿が特徴です。
(烏芻沙摩明王 瑞龍寺)
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