【仏教用語/人物集 索引】

オショウライ(御精来・御精霊・御招来)/富山県のお盆の迎え火

投稿日:2022年8月14日 更新日:


(上市川の河川敷に並ぶ「におとんぼ」)

2022年、3年ぶりに上市の花火大会が開催され「オショウライ」「におとんぼ」との共演が見られました。2020年、2021年は上市の花火大会も新型コロナウイルスの影響で自粛して静かな8月13日を迎えました。2021年8月のお盆は全国的な大雨で上市町も例外ではなく、燃やされることなく晴れを待つ「におとんぼ」が雨の中に立っていましたが、2022年は台風の影響で夕立がありましたが、花火大会の時間にはやんでいました。(2022年8月14日)。

↓ コロナ禍以前の様子です。

8月13日はお盆の迎え火をする日です。地域によって違いが多いのもご存知でしょうか?違いがあると言っても、お盆は自分の縁ある場所に滞在するのが一般的ですから、別の地域のお盆を実際に体験するというのは難しいかもしれません。私も去年までの数年はお盆はインド滞在でしたし、寺院で住職業をしていた頃は行事で忙しい真っ最中でした。今年は富山県上市町の迎え火を見てきました。

インドさながらの世界

インドのバラナシとリシュケシュでガンジス川のガート(日本でいう河川敷部分)に大勢の人が集まって行われる早朝や夕方の祈りを見たことがありますが、どことなく共通する雰囲気を感じました。19時半過ぎから曹洞宗のお盆の読経(スピーカーで遠方にまで聞こえてきた)が始まり、その前後に上部画像にもありますが高さ約10m以上にもなる竹や枝で組んだ「精霊やぐら」「におとんぼ」に点火(次の画像)されます。2018年は12基の「におとんぼ」が約1.5kmほどの間に町内会毎につくられていました。


ロケイチ~上市町はロケイチバンの町~より)

祖先の霊を呼ぶショウライ

その火を使うなどして手持ちのタイマツ「ショウライ」や「招来棒(しょうらいぼう)」(お盆が近づくとこの近所のスーパーなどで売られている藁などでできた棒)と呼ばれるものに火を移し、それをゆっくりと大きく回し「しょうらいこ」と繰り返し唱えたり、「しょーらいこ、しょーらいこ、じーじも来い、ばーばも来い」などと口々に祖先の霊を呼びます。

「精霊やぐら」「におとんぼ」のやぐら焼きはご先祖様が迷わず集落に帰って来られるための大きな目印になり、「ショウライ」はそこから各家庭へ迷わないための目印となるということです。また、「精霊やぐら」「におとんぼ」にはこの日までに七夕飾りが持ち込まれますが、七夕もお盆に関連した行事ですから不自然なことではないです。どちらもお盆の「迎え火」の一種ということでしょう。

ショウライの起源は?

「ショウライ」は「御精来(おしょうらい)」「精霊様(しょうらいさま)」「招来魂(しょうらいこん)」のいずれかが元になっていて、どれもが正しいということだと思います。「ショウライ」の迎え火で招かれた先祖の魂は、盆の三日間家族と共に過ごすとされます。富山県内では県中央部の富山市、射水市、滑川市、上市町を中心に行われている(富山県映像センター2010/04/08付の記録)らしく、形態にはバラエティが見られるとのことで、上市町のように地域が協力して継続して行われているのは有り難い存在と言えます。なお、「精霊やぐら」「におとんぼ」のやぐら焼き後、午後8時からは毎年花火大会が行われるというのも、風習と夏の楽しみが合わさっている良い点でした。

詳細が不明なので現時点では出典は出せませんが、複数のブログなどの記述によると、20~30年くらい前までは上市町や富山市などでは、現在のように河川敷だけで行われのではなく、近所の農業用のため池の土手など(恐らく、現在は開発などで少なくなっている)に上って行ったという記述が散見されました。また、北陸地方は「真宗王国」と地元でも言われるほど浄土真宗の寺院・ご家庭が多いのですが、「ショウライは浄土真宗の行事では?」という記述も散見されましたが、恐らく違うはずです。

浄土真宗の教義では亡くなったら極楽浄土の阿弥陀様のもとに行くはずなので戻って来ません。浄土真宗では「お盆は行わない」というのが本来の姿であり、その証拠に上市町の「ショウライ」の行事も曹洞宗の僧侶が読経するお盆のお経でした。さらに言えば、お盆は元々仏教の行事ではなく、日本民族の風習で、それが仏教(浄土真宗ではない)と習合して現在に残っているものです。

あと、勝手な想像の域は出ませんが、上市町の「ショウライ」を見る限り、上市川の河川敷では立山連峰(剣岳)が見える方角に向けて「精霊やぐら」「におとんぼ」のやぐら焼きも「ショウライ」も行われているので、山に行った先祖を迎える、もしくは、祖霊は水を伝って移動するという説もあるので、川やため池で行っていたという、民俗学的な見方もできると思いました。

今回紹介した地域以外の他の地域では、お墓に先祖の霊を迎えに行くとか、寺院に先祖の霊を迎えに行くとか、そういった先祖の霊の”通り道”のイメージが強いですが、恐らく江戸時代くらいからの寺院の指導でそうなったと思われることからも、「ショウライ」は山や川からダイレクトに先祖の霊が帰ってくる古いタイプの迎え火なので貴重だと考えられます。

「ショウライ」の起源ははっきりしませんが、とにかく幻想的な風景が見どころの風習でした。

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