【仏教用語/人物集 索引】

ミリンダ王の問い

投稿日:0102年2月1日 更新日:

紀元前2世紀後半にアフガニスタン・インド北部を支配したギリシャ人であるインド・グリーク朝の王メナンドロス1世(ミリンダ王/弥蘭王/弥蘭陀王)とインド仏教の長老であるナーガセーナ(那先/那伽犀那/龍軍)との間で紀元前160年頃に3日間行われた問答で、王は最後には仏教信者になる。パーリ語経典の『ミリンダ王の問い』、漢語経典の『那先比丘経』として伝えられている。

初日はミリンダ王がナーガセーナを訪ね、2日目と3日目はナーガセーナが王宮を訪ね問答を行う。初日の問答の始まりはこんな感じです。

あなたの名前を教えてください
王よ、私はナーガセーナと世間に呼ばれているけど、それはあくまでも呼称・記号・通念・名称であって、実体や人格などは存在しないのです
皆さん、ここにいるナーガセーナは、ここに人格の実体がないとおっしゃる。さてこんなことを認めてもよいものだろうか?
もしそうならば、出家修行者に布施をする者、それを受ける者はいったい何者でしょうか?戒を破り罰を受ける者とは誰でしょうか?言われる通りなら、善も、不善も、果も、無くなってしまいませんか?あなたを殺した者にも殺人罪は成り立たなくなってしまう。いったい、その『ナーガセーナ』とは何ですか?頭髪か、肌か、爪か、歯か?
違います
では、肉か筋か骨か、腎臓か心臓かそれとも脳髄か?
違います
では、肉体、感覚、思い、性格、意識のいずれかですか?
違います
ならば、そういったものとは別にナーガセーナがあるのですか?
違います
何ですか! 私はあなたに問いを繰り返しても、一向にナーガセーナが何なのか分かりません。それは単なる名称ですか?とはいえ、実体なくして名称のみがあるはずもない。あなたの言われることは無茶苦茶です。ナーガセーナは「存在せず」などとは・・・
王よ、あなたは今日ここに歩いてこられましたか、それとも車に乗ってこられましたか?
車に乗ってきました
それならば、あなたは車がどういうものかご存知でしょう。私に車がどういうものかを教えて下さい。それは轅(ながえ)ですか?
いえ、違います
車軸が車だろうか、それとも車輪か、車室か、車台がそれか?
違います
では、軛(くびき)か綱か鞭(むち)か?
違います
それならば、それらを寄せ集めれば車になりますか?
そういうわけでもありません
そうであれば、それ以外に車なるものがありますか?
ありません
王よ、私はあなたに問いを繰り返しても、一向に車が何なのか分かりません。それは単なる名称ですか?とはいえ、実体なくして名称のみがあるはずもない。あなたの言われることは無茶苦茶です。皆さん、このような嘘偽りを認めてもよいものだろうか?
私は嘘偽りなど申してはおりません。「車」というのは、それぞれの部分が依存し合った関係性の下に成り立っている呼称・記号・通念・名称です
よくぞ言われた、王よ。あなたは車の何たるかが分かっておいでだ。それとまるで同じで、私、ナーガセーナとは、頭髪・肌・爪、骨に肉、心臓に脳髄、感覚、思いなど、それぞれの部分が依存し合った関係性の下に成り立っている呼称・記号・通念・名称で、人格の実体ではありません

「魂の有無」についての問答

誰でも、死後はまた生まれ変わりますか?
ある者は生まれ変わりますが、ある者は生まれ変わりません
それはどういう人ですか
罪障ある者は生まれ変わり、罪障なく清浄なる者は生まれ変わりません
あなたは生まれ変わりますか?
もし私が死ぬ時に、私の心の中に、生に執着して死ねば、生まれ返りますが、そうでなければ生まれ返りません
わかりました

<< 戻る

-仏教を本気で学ぶ, 年表
-, ,



Copyright © 1993 - 2024 寺院センター All Rights Reserved.