方丈とは、もともと1丈4方の建物という意味で、禅宗寺院における住職/住持の居室、あるいは住職その人のことをこう呼びます。住職は方丈にて修行者を教えることから、単なる私室ではなく重要な伽藍の1つとなっています。正堂(しょうどう)、堂頭(どうちょう)、函丈(かんじょう)などともいいます。※1丈は約3メートル。
方丈は、維摩経の主人公である維摩居士の住んでいた家がモデルとも伝わっています。昔インドで在家ながら仏教を深く信じていた維摩居士は、文殊菩薩をはじめとする8000人の菩薩や500人の声聞たちを、神通力をもって1丈4方の小室に招き入れたという故事によります。(『維摩経』「不思議品」)
・「住持人は方丈にて洗面す。耆年老宿居処に、便宜に洗面架をおけり。住持人もし雲堂に宿するときは、後架にして洗面すべし。」(「正法眼蔵」洗面)
・「味数議定し了らば、方丈衆寮等の厳浄牌に書呈せよ。然して後に明朝の粥を設弁す。」(『典座教訓』2、心が整えば味も整う)
・「有る時、夜、方丈に参じて焼香礼拝して云く、「請うらくは師、後堂首座を許せ。」」(『正法眼蔵随聞記』62、宋土の海門禅師)
<< 戻る