曼珠沙華とは、梵語でいう「マンジュサカ」の音写で、天界に咲く花として「法華経」などの仏典に出てくる花です。ブッダを礼賛して降り注いだ花とされていますが、そのものは実在せず、「マンジュサカ」が「赤い花」、「葉に先立って赤花を咲かせる」という意味から、現在「曼珠沙華」と呼ばれる花に名付けられたようです。
別表記としては、曼殊沙華(法華経での表記)、マンジュシャゲ、彼岸花、ヒガンバナなどがあり、別名・地方名・方言は数多く、葬式花(そうしきばな)、墓花(はかばな)、死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、幽霊花(ゆうれいばな)、火事花(かじばな)、蛇花(へびのはな)、剃刀花(かみそりばな)、狐花(きつねばな)、捨て子花(すてごばな)、灯籠花(とうろうばな)、天蓋花(てんがいばな)などがあります。また、開花時に葉がなく、花と葉を同時に見られないことから、葉見ず花見ず(はみずはなみず)の別称もあります。
開花期間は1週間ほどですが、日本では秋彼岸と同じ時期に開花する地域が多いので彼岸花とも呼ばれますが、あの世とこの世が最も通じやすい時期に咲く花と理解されてきたようです。古来、土葬や野焼きで埋葬されていたので、モグラや野ネズミなどから守るため、墓地などによく植えられているのですが、地下の鱗茎(球根)に強い毒性がある有毒植物だからです。かつて救荒作物としてデンプンを毒抜きして食べられていた、もしくは非常食として準備していたものでもあったようです。
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