また物語に云く、故鎌倉の右大将、始め兵衛佐にて有りし時、内府の辺に一日はれの会に出仕の時、一人の不当人在りき。
その時、大納言のおほせて云く、「是れを制すべし。」と。
大将の云く、「六波羅におほせらるべし。平家の将軍なり。」
大納言の云く、「近々なれば。」
大将の云く、「その人にあらず。」と。
是れ美言なり。この心にて、後に世をも治めたりしなり。今の学人もその心あるべし。その人にあらずして人を呵する事なかれ。
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『正法眼蔵随聞記』
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