跋陀婆羅菩薩はインドの言葉ではバドラパーラと呼ばれます。中国に入り漢字に音訳され跋陀婆羅菩薩となりました。この跋陀婆羅菩薩は『首楞厳経』(しゅりょうごんきょう)に記されている菩薩で、十六人の菩薩が風呂の供養を受けた際、跋陀婆羅菩薩をはじめ菩薩達が忽然として自己と水が一如であることを悟ったことが記されています。その因縁から浴室の守り本尊として、お祀りするようになりました。
また、禅宗でいう浴室は七堂伽藍の一つとして数えられ、僧堂・東司(とうす:トイレ)と共に「三黙道場(会話談笑することを誡める三所のこと)」とされます。禅宗では清規(しんぎ:生活規則))によって月の内、四と九の付く日(四九日、しくにち)が公に開浴(かいよく)することになっています。しかし、夏場などには淋汗(りんかん)と称して沐浴(もくよく)が許されます。浴室に入るに当たって跋陀婆羅菩薩の前にて、
沐浴身体(もくよくしんたい)
当願衆生(とうがんしゅじょう)
心身無垢(しんじんむく)
内外光潔(ないげこうけつ)
という開浴之偈を唱えながら三拝し、その後に着物を脱いで入浴するなど、清規によって入浴作法が定められています。
(跋陀婆羅菩薩 建仁寺)
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