醍醐とは、『大般涅槃経』では五味として順に「乳」「酪」「生酥(しょうそ)」「熟酥(じゅくそ)」「醍醐」という牛乳の発酵精製の段階で一番美味しいものとして例えられます。また、『涅槃経』では、最後で最上の教えであることを醍醐に例えられています。それが一般にも使われるようになり、物事の本当の面白さや深い味わいのことを「醍醐味」というようになりました。
カルピス社の創業者・三島海雲さんは僧侶でもあり、新商品に仏教由来の名前をと考え、当初はカルシウムの「カル」と最高の味を意味する醍醐(サンスクリット語でサルピルマンダ)の「ピル」を合わせた「カルピル」が考えられましたが、「赤とんぼ」などで有名な作曲家・山田耕筰さんに相談したところ、「カルピル」は歯切れが悪いとの助言を受け、五味の次位である熟酥(サンスクリット語でサルピス)の「ピス」と合わせ「カルピス」という乳製品の名前が生まれたそうです。
1902(明治35)年、海雲さんは大学でのアドバイスもあり、中国大陸へと渡ります。1905(明治38)年から雑貨商の事業を手がけるようになり、ある時、内モンゴルの地を訪れました。長旅の疲れですっかり胃腸が弱り、体調を崩していましたが、酸乳や馬乳酒といった乳酸菌を用いた飲料を飲んでいるうちに胃腸の調子が良くなり、体調も回復したといいます。
1915(大正4)年、大陸での経験を日本のために役立てようと帰国します。ある時、日本で流行りはじめていたヨーグルトを試食します。しかし、海雲さんにとってその味は、物足りないものだったので、もっとおいしい乳酸菌を使った食品を多くの人に提供したいと試行錯誤を重ねて乳酸菌を用いた様々な飲食物を世に出します。
そして、ついにその時が訪れます。1919(大正8)年7月7日、カルピスが発売されました。発売日の七夕に因んで天の川を意識した水玉模様のデザインとなり、現代まで続くスタイルとなっていきました。カルピスのパッケージを見て七夕を連想する人は少ないかもしれませんが、長く親しまれるものには訳があるということを再認識できました。
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