ブータン王国に行く機会がありました。ブータン王国ではチベット仏教の流れを汲むブータン仏教が根付いています。仏教史的に見れば日本と同じ大乗仏教で、後期密教の影響を強く受けています。仏教伝来はチベット経由で7世紀頃とのことなので、インドに隣接しているとはいえ、日本への仏教伝来よりも遅かったようです。
ブータン王国といえば、幸せの国というイメージで、GNH(Gross National Happiness/国民総幸福量)を提唱している国ということで注目を集めています。仏教を学べばそのことは分かるのですが、この機会に私が注目したのは国教としての仏教です。ブータン王国では仏教は国教であり、仏教で国を治めています。
掲載画像はプナカという場所のプナカゾンです。現在は県庁の役割をしていますが、かつては冬季の首都でした。初代国王の戴冠式も、第一回国会もここで行われた由緒正しき場所です。現在も庁舎であり、寺院でもあります。仏塔と菩提樹のある中庭を抜け進んで行くと、講堂(キュンレイ)があります。内部の本尊はブッダで、左がパドマサンババ、右がシャプドゥンという配置です。
その他にもゾンを見ましたが、講堂には大きな仏像、境内には至る所に壁画が描かれ整備されています。第一印象としては、奈良時代の日本の鎮護国家です。奈良の大仏があって、国分寺を地方につくってという、いわゆる国が仏教を保護して税金でもって寺を建てる国教です。
現在の首都ティンプーのタシチョゾンは、国王、そして宗教界の最高指導者である大僧正の座所で、政治、信仰の中心になっています。近くの山には大仏の建造が済み、境内を整備中でした。現在の日本で、このように国が進んで大仏をつくって、寺を建立してなどしては批判があるでしょうから、「幸せ」の測り方も違って当たり前です。
現在、ブータン王国はインドへの依存度が強いです。しかし、歴史的にはチベット文化の影響を長らく受けてきました。そのチベットは中国による“民主化”が行われ、周辺にあった国々も大国に吸収されました。そして、独自性が失われてしまったのです。ブータン王国は大乗仏教を国教とし、伝統を守っている貴重な存在であることは間違いありません。定期的に見聞したことをまとめてみたいと思っています。
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