【仏教用語/人物集 索引】

スッタニパータ【第5 彼岸にいたる道の章】18、十六学生の質問の結語

投稿日:0202年5月28日 更新日:

 ブッダ)は、マガダ国のパーサーカ霊地にとどまっておられた時、以上のことを説かれ、バーヴァリの門弟である十六人のバラモンに請われ問われる度ごとに、質問に対して解答をのべた。もしもこれらの質問の一つ一つの意義を知り、理法を知り、理法に従って実践したならば、老衰と死との彼岸に達するであろう。これらの教えは彼岸に達せしめるものであるから、それ故にこの法門は「彼岸にいたる道」と名づけられている。

1124 アジタと、ティッサ・メッテイヤと、プンナカと、メッタグーと、ドータカと、ウバシーヴァと、ナンダと、またヘーマカと、

1125 トーデイヤカッパとの両人と、賢者ジャトゥカンニンと、バドラーヴダと、ウダヤと、ポーサーラ・バラモンと、モーガラーシャと、大仙人ビンギヤと、

1126 これらの人々は行いの完成した仙人である目ざめた人(ブッダ)のもとにやってきて、みごとな質問を発して、ブッダなる最高の人に近づいた。

1127 彼らが質問を発したのに応じて、目ざめた人はあるがままに解答された。聖者は、諸々の質問に対して解答することによって、諸々のバラモンを満足させた。

1128 彼らは、太陽の裔である目ざめた人・眼ある者(ブッダ)に満足して、優れた智慧ある人(目ざめた人)のもとで清らかな行いを修めた。

1129 一つ一つの質問に対して目ざめた人が説かれたように、そのように実践する人は、此岸から彼岸に赴くことであろう。

1130 最上の道を修める人は、此岸から彼岸に赴くであろう。それは彼岸に至るための道である。それ故に彼岸にいたる道と名づけられる。

1131 ピンギヤさんはバーヴァリのもとに帰って、復命して言った、
彼岸に至る道をわたくしは読誦しましょう。無垢で叡智豊かな人(ブッダ)は、みずから観じた通りに説かれました。無欲で煩悩の叢林のない立派な方は、どうして虚妄を語られるでしょうか。

1132 垢と迷いを捨て去って、高慢と隠し立てとを捨てているブッダの、讃嘆を表わす言葉を、さあ、わたくしは誉めたたえることにしましょう。

1133 バラモンよ。暗黒を払う目ざめた人(ブッダ)、あまねく見る人、世間の究極に達した人、一切の迷いの生存を超えた人、汚れのない人、一切の苦しみを捨てた人、彼は真に目ざめた人(ブッダ)と呼ばれるに相応しい人でありますが、わたくしは彼に近侍しました。

1134 たとえば鳥が疎な林を捨てて果実豊かな林に住みつくように、そのようにわたくしもまた見ることの少い人々を捨てて、白鳥のように大海に到達しました。

1135 かつてゴータマブッダ)の教えよりも以前に昔の人々が『以前にはこうだった』『未来にはこうなるであろう』と言ってわたくしに説き明かしたことは、全て伝え聞きにすぎません。それは全て思索の紛糺を増すのみ。

1136 彼は独り煩悩の暗黒を払って坐し、高貴で、光明を放っています。ゴータマは智慧豊かな人です。ゴータマは叡智豊かな人です。

1137 即時に効果の見られる、時を要しない法、すなわち煩悩なき妄執の消滅をわたくしに説示しました。彼に比すべき人はどこにも存在しません。」

1138 バーヴァリが言った、「ピンギヤよ。そなたは智慧豊かなゴータマ、叡智豊かなかのゴータマのもとから、瞬時でも離れて住むことが出来るのか?

1139 彼はまのあたり即時に実現され、時を要しない法、すなわち煩悩なき妄執の消滅をそなたに説示した。彼に比すべき人はどこにも存在しない。」

1140 ピンギヤが言った、「バラモンさま。わたくしは、智慧豊かなゴータマ、叡智豊かなかのゴータマのもとから、瞬時でも離れて住むことが出来ません。

1141 まのあたり即時に実現される、時を要しない法、すなわち煩悩なき妄執の消滅をわたくしに説示されました。彼に比すべき人はどこにも存在しません。

1142 バラモンさま。 わたくしは怠ることなく、昼夜に、心の眼を以て彼を見ています。彼を礼拝しながら夜を過ごしています。ですから、わたくしは彼から離れて住んでいるのではないと思います。

1143 信仰と、喜びと、意と、おもいとが、わたくしを、ゴータマの教えから離れさせません。どちらの方角でも、智慧豊かな方のおもむかれる方角に、わたくしは傾くのです。

1144 わたくしは、もう老いて、気力も衰えました。ですから、我が身はかしこに赴くことは出来ません。しかし想いを馳せて常に赴くのです。バラモンさま。わたくしの心は、彼と結びついているのです。

1145 わたくしは汚泥の中に臥してもがきながら、洲から洲へと漂いました。そうしてついに、激流を乗り超えた、汚れのない完全に悟った人(正覚者)にお会いしたのです。」

1146 師ブッダが現れて言った、「ヴァッカリやバドラーヴダやアーラヴィ・ゴータマが信仰を捨て去ったように、そのようにあなたもまた信仰を捨て去れ。そなたは死の領域の彼岸にいたるであろう。ピンギヤよ。」

1147 ピンギヤは言った、「わたくしは聖者の言葉を聞いて、ますます心が澄む(信ずる)ようになりました。悟った人は、煩悩の覆いを開き、心の荒みなく、明察のあられる方です。

1148 神々に関してもよく熟知して、あれこれ一切の事柄を知っておられます。師は、疑いをいだきまた言を立てる人々の質問を解決されます。

1149 どこにも譬うべきものなく、奪い去られず、動揺することのない境地に、わたくしは確かに赴くことでしょう。このことについて、わたくしには疑惑がありません。わたくしの心がこのように確信して了解していることを、お認めください。」

<彼岸に至る道>の章おわる

八回にわたって誦える分量ある聖典のスッタニパータ終る。

※以上、スッタニパータ全5章1149句。

※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。

【 第1 蛇の章 】

1、蛇
2、ダニヤ
3、犀の角
4、田を耕すバーラドヴァージャ
5、チュンダ
6、破滅
7、賤しい人
8、慈しみ
9、雪山に住む者
10、アーラブァカという神霊
11、勝利
12、聖者

【 第2 小なる章 】

1、宝
2、なまぐさ
3、恥
4、こよなき幸せ
5、スーチローマ
6、理法にかなった行い
7、バラモンに相応しいこと
8、船
9、いかなる戒めを
10、精励
11、ラーフラ
12、ヴァンギーサ
13、正しい遍歴
14、ダンミカ

【 第3 大いなる章 】

1、出家
2、つとめ励むこと
3、みごとに説かれたこと
4、スタンダリカ・バーラドヴァージャ
5、マーガ
6、サビヤ
7、セーラ
8、矢
9、ヴァーセッタ
10、コーカーリヤ
11、ナーラカ
12、二種の観察

【 第4 八つの詩句の章 】

1、欲望
2、洞窟についての八つの詩句
3、悪意についての八つの詩句
4、清浄についての八つの詩句
5、最上についての八つの詩句
6、老い
7、ティッサ・メッテイヤ
8、パスーラ
9、マーガンディヤ
10、死ぬよりも前に
11、争闘
12、並ぶ応答 ─ 小篇
13、並ぶ応答 ─ 長篇
14、迅速
15、武器を執ること
16、サーリプッタ

【 第5 彼岸にいたる道の章 】

1、序
2、学生アジタの質問
3、学生ティッサ・メッテイヤの質問
4、学生プンナカの質問
5、学生メッタグーの質問
6、学生ドータカの質問
7、学生ウバシーヴァの質問
8、学生ナンダの質問
9、学生ヘ-マカの質問
10、学生トーデイヤの質問
11、学生カッパの質問
12、学生ジャトゥカンニンの質問
13、学生バドラーヴダの質問
14、学生ウダヤの質問
15、学生ポーサーラの質問
16、学生モーガラージャの質問
17、学生ビンギヤの質問
18、十六学生の質問の結語

なお、底本としてパーリ語経典の『スッタニパータ』を使用していますが、学問的な正確性を追求する場合、参考文献である『「ブッダの言葉」中村元訳 岩波文庫』を読むようおすすめします。なお、章題/節題は比較しやすいよう同じにしました。

<< 戻る

-仏教を本気で学ぶ
-, , , , , , , , , , , , , , , , , , ,



Copyright © 1993 - 2024 寺院センター All Rights Reserved.