【仏教用語/人物集 索引】

スッタニパータ【第3 大いなる章】2、つとめ励むこと

投稿日:0202年5月28日 更新日:

425 ネーランジャラー河の畔にあって、安穏を得るために、つとめ励み専心し、努力して瞑想していたわたくしに、

426 悪魔ナムチはいたわりの言葉を発しつつ近づいてきて言った、「あなたは痩せていて顔色も悪い。あなたの死が近づいた。

427 あなたが死なないで生きられる見込みは、千に一つの割合だ。君よ、生きよ。生きた方がよい。命があってこそ諸々の善行をも為すこともできるのだ。

428 あなたがヴェーダ学生としての清らかな行いをなし、聖火に供物をささげてこそ、多くの功徳を積むことが出来る。苦行につとめ励んだところで、何になろうか。

429 つとめ励む道は、行き難く、行い難く、達し難い。」この詩を唱えて、悪魔は目ざめた人(ブッダ)の側に立っていた。

430 かの悪魔がこのように語った時に、尊師(ブッダ)は次のように告げた。
「怠け者の親族よ、悪しき者よ。あなたは世間の善業を求めてここに来たのだが、

431 わたしはその世間の善業を求める必要は微塵もない。悪魔は善業功徳を求める人々にこそ語るがよい。

432 わたしには信念があり、努力があり、また知慧がある。このように専心しているわたしくしに、あなたはどうして生命を保つことを尋ねるのか?

433 励みから起るこの風は、河水の流れも涸らすであろう。ひたすら専心している我が身の血がどうして涸渇しないであろうか。

434 身体の血が涸れたならば、胆汁も痰も涸れるであろう。肉が落ちると、心はますます澄んでくる。我がおもいと智慧と統一した心とはますます安立するに至る。

435 わたしはこのように安住し、最大の苦痛を受けているのであるから、我が心は諸々の欲望にひかれることがない。見よ、心身の清らかなことを。

436 あなたの第一の軍隊は欲望であり、第二の軍隊は嫌悪であり、第三の軍隊は飢餓であり、第四の軍隊は妄執と言われる。

437 あなたの第五の軍隊はものうさ、睡眠であり、第六の軍隊は恐怖と言われる。あなたの第七の軍隊は疑惑であり、あなたの第八の軍隊はみせかけと強情と、

438 誤って得られた利得と名声と尊敬と名誉と、また自己をほめたたえて他人を軽蔑することである。

439 ナムチよ、これはあなたの軍勢である。黒き魔(ナムチ)の攻撃軍である。勇者でなければ、彼に打ち勝つことが出来ない。勇者は打ち勝って楽しみを得る。

440 このわたくしがムンジャ草を取り去るだろうか?敵に降参してしまうだろうか?この場合、命はどうでもよい。わたくしは、敗れて生きながらえるよりは、戦って死ぬ方がましだ。

441 ある修行者たち・バラモンどもは、このあなたの軍隊の内に埋没してしまって、姿が見えない。そうして徳行ある人々の行く道をも知っていない。

442 軍勢が四方を包囲し、悪魔が象に乗ったのを見たからには、わたくしは立ち迎えて彼らと戦おう。わたくしをこの場所から退けることなかれ。

443 神々も世間の人々もあなたの軍勢を破り得ないが、わたくしは智慧の力であなたの軍勢を打ち破る。焼いてない生の土鉢を石で砕くように。

444 みずから思いを制し、よくおもい(注意)を確立し、国から国へと遍歴しよう。教えを聞く人々を広く導きながら。

445 彼らは、無欲となったわたくしの教えを実行しつつ、怠ることなく、専心している。そこに行けば憂えることのない境地に、彼は赴くであろう。」

446 悪魔は言った、
「我は七年間も尊師ブッダ)に、一歩一歩ごとにつきまとうていた。しかもよく気を付けている正覚者には、つけ込む隙を見つけることができなかった。

447 烏が脂肪の色をした岩石の周囲をめぐって『ここに柔かいものが見つかるだろうか?味のよいものがあるだろうか?』といって飛び廻ったようなものである。

448 そこに美味が見つからなかったので、烏はそこから飛び去った。岩石に近づいたその烏のように、我らはいといてゴータマブッダ)を捨て去る。」

449 悲しみにうちしおれた悪魔の脇から、琵琶がパタッと落ちた。ついで、かの夜叉は意気消沈してそこに消え失せた。

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※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。

なお、底本としてパーリ語経典の『スッタニパータ』を使用していますが、学問的な正確性を追求する場合、参考文献である『「ブッダの言葉」中村元訳 岩波文庫』を読むようおすすめします。なお、章題/節題は比較しやすいよう同じにしました。

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