【仏教用語/人物集 索引】

スッタニパータ【第2 小なる章】7、バラモンに相応しいこと

投稿日:0202年5月28日 更新日:

 わたしが聞いたところによると、あるとき尊き師ブッダ)はサーヴァッティーのジェータ林にある孤独な人々に食を給する長者の園におられた。その時、コーサラ国に住む、多くの、大富豪であるバラモンたち(彼らは老いて、年長け、老いぼれて、年を重ね、老齢に達していたが)は、のおられるところに近づいた。そうしてと会釈した。喜ばしい思い出に関する挨拶の言葉を交わしたのち、彼らは傍らに坐した。

 そこで大富豪であるバラモンたちはに言った、「ゴータマブッダ)さま。そもそも今のバラモンは昔のバラモンたちの守っていたバラモンの定めに従っているでしょうか?」は答えた、「バラモンたちよ。今のバラモンたちは昔のバラモンたちの守ったバラモンの法に従ってはいない。」「では、ゴータマさまは、昔のバラモンたちの守ったバラモンの法を我らに話して下さい。もしもゴータマさまにお差支えがなければ。」「では、バラモンたちよ、お聞きなさい、よく注意なさい。わたしは話してあげましょう。」「どうぞ」と、大富豪であるバラモンたちは、に答えた。

 は次のことを告げた。

284 昔の仙人たちは自己をつつしむ苦行者であった。彼は五種の欲望の対象(色、声、香、味、触)を捨てて、自己の真実の理想を行った。

285 バラモンたちには家畜もなかったし、黄金もなかったし、穀物もなかった。しかし彼らはヴェーダ読誦を財産ともなし、穀物ともなし、ブラフマンを倉として守っていた。

286 彼らのために調理せられ家の戸口に置かれた食物、すなわち信仰心をこめて調理せられた食物を求めるバラモンたちに与えようと、彼ら(信徒)は考えていた。

287 豊かに栄えていた地方や国々の人々は、種々に美しく染めた衣服や臥床や住居をささげて、バラモンたちに敬礼した。

288 バラモンたちは法によって守られていたので、彼らを殺してはならず、打ち勝ってもならなかった。彼らが家々の戸口に立つのを、なんびとも決して妨げなかった。

289 彼ら昔のバラモンたちは四十八年間、童貞の清浄行を行った。知と行とを求めていたのであった。

290 バラモンたちは他のカーストの女を娶らなかった。彼らはまたその妻を買うこともなかった。ただ相愛して同棲し、相和合して楽しんでいたのであった。

291 同棲して楽しんだのではあるけども、バラモンたちは、妻に近づき得る時を除いて月経のために遠ざかったときは、その間は決して婬欲の交わりを行わなかった。

292 彼らは、不婬の行と戒律と正直と温順と苦行と柔和と不傷害と耐え忍びとをほめたたえた。

293 彼らの内で勇猛堅固であった最上のバラモンは、実に婬欲の交わりを夢に見ることさえもなかった。

294 この世における聡明な性のある人々は、彼の行いにならいつつ、不婬と戒律と耐え忍びとをほめたたえた。

295 米と玩具と衣服とバターと油とを乞い、法に従って集め、それによって祭祀を整え行った。彼らは、祭祀を行う時にも、決して牛を殺さなかった。

296 母や父や兄弟や、また他の親族のように、牛は我らの最上の友である。牛からは薬が生ずる

297 それら牛から生じた薬は食料となり、気力を与え、皮膚に光沢を与え、また楽しませてくれる。牛にこのような利益のあることを知って、彼らは決して牛を殺さなかった。

298 バラモンたちは、手足が優美で、身体が大きく、容色端麗で、名声あり、自分のつとめに従って、為すべきことを為し、為してはならぬことは為さないということに熱心に努力した。彼らが世の中にいた間は、この世の人々は栄えて幸福であった。

299 しかるに彼らに誤った見解が起こった。次第に王者の栄華と化粧盛装した女人を見るに従って、

300 また駿馬に牽かせた立派な車、美しく彩られた縫物、種々に区画され部分ごとにほど良くつくられた邸宅や住居を見て、

301 バラモンたちは、牛の群が栄え、美女の群を擁するすばらしい人間の享楽を得たいと熱望した。

302 そこで彼はヴェーダの呪文を編纂して、かの甘蔗王のもとに赴いて言った、「あなたは財宝も穀物も豊かである。祭祀を行いなさい。あなたの富は多い。祭祀を行いなさい。あなたの財産は多い。」

303 そこで戦車兵の主である王は、バラモンたちに勧められて、馬の祀り、人間の祀り、擲棒の祀り、ヴァージャペッヤの祀り、誰にでも供養する祀り、これらの祀りを行なって、バラモンたちに財を与えた。

304 牛、臥具、衣服、盛装化粧した女人、またよく造られた駿馬に牽かせる車、美しく彩られた縫物、

305 部分ごとによく区画されている美事な邸宅に種々の穀物をみたして、これらの財をバラモンたちに与えた。

306 そこで彼らは財を得たのであるが、さらにそれを蓄積することを願った。彼らは欲に溺れて、さらに欲念が増長した。そこで彼らはヴェーダの呪文を編纂して、再び甘蔗王に近づいた。

307 「水と地と黄金と財と穀物とが生命ある人々の用具であるように、牛は人々の用具である。祭祀を行いなさい。あなたの富は多い。祭祀を行いなさい。あなたの財産は多い。」

308 そこで戦車兵の主である王は、バラモンたちに勧められて、幾百千の多くの牛を犠牲のために屠らせた。

309 牛は、脚を以ても、何によっても決して他のものを害うことがなくて、羊に等しく柔和で、瓶をみたすほど乳を搾らせてくれる。しかるに王は、角をとらえて、刃を以てこれを屠らせた。

310 刃が牛におちるや、その時神々と祖霊と帝釈天阿修羅と羅刹たちは、「不法なことだ!」と叫んだ。

311 昔は、欲と飢えと老いという三つの病いがあっただけであった。ところが諸々の家畜を祀りのために殺したので、九十八種の病いが起こった。

312 このように殺害の武器を不法に下すということは、昔から行われて、今に伝わったという。何ら害のない牛が殺される。祭祀を行う人は理法に背いているのである。

313 このように昔からのこのつまらぬ風俗は、識者の非難するものである。人はこのようなことを見るごとに、祭祀実行者を非難する。

314 このように法が廃れた時に、隷民(シュードラ)と庶民(ヴァイシヤ)との両者が分裂し、また諸々の王族がひろく分裂して仲たがいし、妻はその夫を蔑むようになった。

315 王族も、梵天の親族(バラモン)も、並びに種姓の制度によって守られている他の人々も、生まれを誇る論議を捨てて、欲望に支配される至った、と。

 このように説かれた時に、大富豪であるバラモンたちは、に言った、「すばらしいことです! ゴータマブッダ)さま。すばらしいことです! ゴータマさま。あたかも倒れた者を起こすように、覆われているものを開くように、方向に迷った者を示すように、あるいは『眼ある人々は色や形を見るであろう』といって暗闇の中で灯火をかかげるように、ゴータマさまは種々の仕方で理法を明らかにされた。ここで、我らはゴータマさまに帰依したてまつる。また真理と修行僧の集いに帰依したてまつる。ゴータマさまは、我々を在俗信者として、受け入れてください。今日から命の続く限り帰依いたします。」

⇒ 続きは 8、船 ⇒ 目次(はじめに戻る)

※このページは学問的な正確性を追求するものではありません。前知識のない一般の方でも「読んでみよう!」と思ってもらえるよう、より分かりやすく読み進めるために編集しています。漢字をひらがなに、旧字体を新字体に、送り仮名を現代表記に、( )にふりがなをつけるなど、原文に忠実ではない場合があります。

なお、底本としてパーリ語経典の『スッタニパータ』を使用していますが、学問的な正確性を追求する場合、参考文献である『「ブッダの言葉」中村元訳 岩波文庫』を読むようおすすめします。なお、章題/節題は比較しやすいよう同じにしました。

<< 戻る

-仏教を本気で学ぶ
-, , , , , , ,



Copyright © 1993 - 2024 寺院センター All Rights Reserved.