【仏教用語/人物集 索引】

【第5話】記憶~人間は不完全な生き物

投稿日:2020年7月14日 更新日:

子育てをするようになってからメモを取る習慣ができました。いつ何をしたか、食事、排せつ、昼寝などなどを記録するためでした。正直なところ、子どもが落ち着いた頃に一旦メモ取りを止めたこともありますが、現在は再開しています。

インドで住んでいる時にも、室内で野菜を育てていた時のメモや、買い物のメモ、料理のメモも取っていました。書いておけば必要な時に見返すことが出来ます。今は、良いなと思ったことは、先ずメモをするようにしています。

何かアイデアが浮かんでも、違うことをすると忘れるからです。思い出そうとして無駄な時間やモヤモヤを感じるくらいなら進んでメモ。オススメです。人の脳は、どうやら忘れるようにもできているようです。脳は憶えるためにあるようなイメージもありますが、忘れていくことで、新たな記憶ができるとも考えられています。

神経科学者のロナルド・デイヴィスさんという方がいて、彼らの研究によると「脳が記憶を忘れるのは、脳に備わった基本的な機能である可能性がある」と述べています。忘れやすいのは本人のせいだけではなく、脳が記憶を忘れる機能を持っているから当然、ということになれば、何で忘れてしまったのかと悩まなくても済みます。

「なんであんなことを言ってしまったのかな」と後悔するようなことが誰にでもあると思いますが、その言葉が出たのにも理由があったはずです。よく考えて出る言葉や、反射的に出る言葉、様々な条件が重なって、そのような言葉でコミュニケーションをしています。

人の顔を見ればいつも同じようにネガティブなことを言ってくる人、いますよね。その人にとってみれば、過去の重要な記憶を会えば思い出し、声に出さずにいられないんです。目の前の人を相手にしていない。記憶の中の相手が相手です。

あなたにも同じようなことがあるかもしれません。程度が大きくなると、トラウマと呼ばれます。何かのきっかけにトラウマを思い出して、思考停止、立ちすくむ、座り込む。辛いと思います。しかし、これも自分の中の記憶などを相手にしている現象です。

いっそのこと、コンピューター上のデータのように上書きできれば良いなとも思います。「いやいや、人間は機械じゃないから」と思うかもしれませんが、忘れることも日常茶飯事な出来事です。どれを記憶して、どれを忘れてと指定できないところが難しいところです。

はじめにメモの話をしましたが、忘れるからメモをします。思い出した方が良いことをメモするわけですが、思い出したくないことの方を憶えているというのは、やはり人間は不完全な生き物なのですね。考え方によっては、嫌なことをはっきりさせるために憶えているということです。

嫌な思い出を思い出して「嫌だな」「気分悪いな」で落ち込んでいくのではなく、「ただの記憶だ」「嫌なことを忘れて調子に乗ってるから脳が注意を促しているんだな」という程度に切り替えて、客観的に見た方が良さそうです。

大切なことをメモに取り、アイデアを勉強や仕事、家庭で活かしていきましょう。コンピューターのように記憶の消去や上書きはできなくとも、新しい刺激で過去は薄れていくことを実感したことがあると思います。

例えば、記念日を大事にする習慣は人類の発明だと思います。良いことで言えば、自分の誕生日、入学、入社、結婚記念日、子どもが産まれた日などです。何年経ったからお祝いしようということもそうですが、初々しい気持ちが蘇るのが記念日です。

目の前の現実も大事ですが、今の生活を見直す切っ掛けになるのが記念日です。気持ちが持続しないことは当然です。何か決心を決めた日というのは、テンションが上がるものですが、ずっと続けられるかといえばそうではないことが多いでしょう。

記念日や「頑張るぞ!」という気持ちを込めた握りこぶしをつくるなどの動作、そこに行けば初心を思い出す場所など、気持ちが戻ってくる切っ掛けをわざとつくっておいたり、見つけておくのがポイントです。戻ってくる場所を忘れてはいけません。

▶【第4話】意識~感謝の気持ちや畏敬の念を持つ時間を作る

▶【第6話】空間~狭まったり、広まったり

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