【仏教用語/人物集 索引】

【第2話】変換~分かりやすく伝える工夫

投稿日:2020年7月11日 更新日:

マンガを原作としてテレビドラマや映画にすることはよくあります。あの俳優さん、はまり役だなとか、マンガもドラマも別物として楽しめるとか、相乗効果が生まれるのも特徴です。マンガだから出来る表現もあれば、マンガの限界というのもあります。

マンガには省略や変形、誇張などの特色があります。それを変換し、リアルの人間が演じる時、そのマンガを知っている人にとって見れば、違和感が必ずあるはずです。それでも、内容は既に知っているのに、ドラマを見たくなるというのは興味深いところです。

変換ということでは、日本語から英語などへの翻訳は、言葉と言葉の変換です。意味が通じるように訳す作業です。コンピューターにもプログラミング言語という数字や記号や文字が変換され、スマホなどでアプリや画像、動画などを表示しています。このように世の中には、いくつもの変換作業を踏まえて、分かりやすく伝える工夫をしているわけです。

お寺に関連したことも話しておきましょう。お釈迦様が2500年くらい前に説いた仏教は、弟子たちにより語り継がれました。初めは言葉から言葉で、師匠から弟子に伝えられましたが、多言語に変換、文字に変換、そのような変換を経て日本にも伝わりました。

お釈迦様の姿も、亡くなって数百年経ってから仏像で表現されるようになりました。実際のお釈迦様はどうであったかは置いておくとして、お経などに書かれた特徴から造形されました。パンチパーマのような髪型である螺髪(らほつ)もそこからきています。

「上野の西郷さん」と呼ばれて親しまれている西郷隆盛像がありますが、その像が公開される際に招かれた西郷さんの奥さんは「うちの主人はこんな人じゃなかったですよ」と言った話もあるくらいなので、形作るということは、製作者の意図も加わります。

よく知る人にとって見れば、違和感が伴うのが当然だと思います。しかし、本物の西郷さんを知らない人にとってみれば、事実はどうであっても、あれが西郷さんのイメージになっているというわけです。

ネット上では、自分自身には大して関係のないあらゆる問題について、真実かどうかということを問題にする人が多いそうですが、真実かどうかは本人やそのごく身近な人たちしか分かりません。第三者が知りたいと思っても、伝わってくる情報は、意図され、変換された情報だということを知っておいた方が精神衛生面にとっても良いでしょう。当事者でもないのに情報に煽られ、怒ったり、噂したりする消耗戦はお勧めしません。

人は伝えたいことがある時、あらゆるものを変換しているのではないでしょうか。だから、仕事でも、勉強でも、家庭でも、自分の言葉で伝えることが重要になります。それがどこかで聞いたことがあるようなセリフであっても、その人が言った言葉になることで力になるような気がしませんか?

マンガもドラマも映画も外国語翻訳もプログラミング言語もお経も仏像も、その表現独特の特徴があります。あなたに何か得意分野があるのであれば、興味があるものを得意分野にどんどん変換していくのも面白いと思います。マンガやドラマや映画も「これ、こっちでやったら面白いかも!?」という発想から変換が行われているのではないでしょうか。

壁を越えたものには力を感じます。壁の外の世界で生きる経験は、進んでも戻っても活かせるはずです。失敗する時もあるし、違和感もある。反対意見や賛成意見。理想と現実。その時々の条件に合わせて、変換されるものが、どのように形作られるかは興味深いところです。

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