【仏教用語/人物集 索引】

千手観音菩薩(せんじゅかんのんぼさつ)

投稿日:2020年9月20日 更新日:

 
千手観音菩薩は、十一面千手観音、千手千眼観音、十一面千手千眼観音、千手千臂観音などとも呼ばれます。サンスクリット(梵語)では、サハスラブジャ・アーリア・アヴァローキテーシュヴァラ・ボーディサットヴァといい、サハスラブジャとは文字通り「千の手」の意味で、ヴィシュヌ神やシヴァ神、女神ドゥルガーといった神々の異名でもあり、インドでヒンドゥーの影響を受けて成立したと考えられています。人々の苦悩に応じて大慈悲を行ずるところから千変万化の相となる観世音菩薩の変化身(へんげしん)の1つであり、その他、姿の特徴としては、頭部正面・宝冠の前面に阿弥陀如来の化仏(けぶつ)を表します。坐像、立像ともにあり、実際に千本の手を表現した作例もありますが、十一面四十二臂とする姿が多いようです。六観音の1つでも表されています。

千手観音菩薩の持物(じもつ)については、『千手千眼陀羅尼経』などの経典に説かれており、実際の彫像、画像なども経典に従って造形されています。西村公朝『仏の世界観』(吉川弘文館、1980)による左右手の持物を紹介します。なお、実際の像によっては左右逆の場合もあります。以下の38の持物をもつ手に加えて「合掌手」と「宝鉢手」の作例を見ることができ、腹前(坐像の場合は膝上)で2本の手を組みその上に宝鉢を乗せ、胸前で合掌する2本の手を合わせて42臂となります。

左手の持物

1.宝戟(ほうげき) 杖状のもので先端が3つに分かれた武器で敵を避け、追い払うこと。  
2.化仏(けぶつ) 十方の仏を表す仏像で、将来の成仏を確約する意味。
3.宝鐸(ほうたく) 小型の鐘のこと。音声を得ること。
4.白蓮華(びゃくれんげ) 白い蓮華のこと。
5.払子(ほっす) 元来は蝿などを追い払うための道具で、さわりを除くこと。   
6.羂索(けんさく) 投げ縄のこと。一切衆生を仏法へと導き、相応の法を獲得せしめる。
7.日輪(にちりん) 経典には「日精摩尼」(にっしょうまに)とあり、盲目な人が光を得ること。
8.宝輪(ほうりん) 経典には「不退金輪」とあり、仏の身になるまで悟りを求める心を得ること。  
9.宝螺(ほうら) 天神、善神を呼び寄せる、ほら貝のこと。  
10.玉環(ぎょくかん) 「金環」とも。これに代えて「宝釧」(ほうせん、腕輪)をもつこともある。  
11.髑髏杖(どくろじょう) 一切の鬼神を意のままに操ること。
12.紅蓮華(ぐれんげ) 諸天の宮殿に往生し、様々な功徳を成就させること。
13.傍牌(ぼうはい) 龍の顔を表した楯のようなもの。
14.宮殿(くうでん) 経典には「化宮殿」とあ、胎生の中に身を受けないこと。
15.五色雲(ごしきうん) 右手に持つ場合もある。不老長寿を表す。
16.宝鉤(ほうこう) 経典には「倶尸鉄鉤」とある。先端が直角に曲がった棒状の武器。  
17.宝剣(ほうけん) 柄(つか)の部分が三叉に分かれた三鈷剣で一切の悪鬼を鎮めること。
18.宝弓(ほうきゅう) 右手に持つ矢(宝箭)と対をなす。出世すること。
19.澡瓶(そうびょう) 「軍持」とも。水差しのことで、梵天の世界に生まれ変われること。 

右手の持物

20.錫杖(しゃくじょう) 左手にもつ「宝戟」と対をなす。杖の上方に輪をいくつも付けてあり、これを持って歩くと輪が音を発する。元来はインドで山野を歩く際の毒蛇除けに使用したもので、全ての人々を慈愛し、守護すること。
21.化仏(けぶつ) 十方の仏を表す仏像で、将来の成仏を確約する意味。
22.三鈷杵(さんこしょ) 中央に握りがあり、両端が三叉になった法具。経典ではこれを持つ手を「跋折羅手」(ばさらしゅ)とし、一切の天魔、外道を抑制すること。
23.青蓮華(しょうれんげ) 十方の浄土に生まれ変わること。
24.楊枝(ようじ) 柳の枝。「楊柳(ようりゅう)」とも。体の諸々の病気を治すこと。
25.数珠(じゅず) 十方の仏たちが来て、手を差し延べること。
26.月輪(がちりん) 経典には「月精摩尼」とあり、熱病にかかった時、冷気を得ること。
27.宝珠(ほうじゅ) 経典には「如意珠」とあり、衣・食・住に恵まれこと。 
28.宝経(ほうきょう) 「経篋」(きょうきょう)とも。仏典のことで、仏の教えを得る。
29.宝印(ほういん) 弁舌にすぐれること。 
30.蒲桃(ぶどう) 葡萄のこと。木の実・草の実・穀物を得ること 
31.紫蓮華(しれんげ) 十方の一切の仏達を目前に見るを得ること。
32.施無畏手(せむいしゅ) 持物を持たない手。あらゆる場所で、恐れを払うこと。   
33.宝鏡(ほうきょう) 広大な智慧を得ること。
34.宝篋(ほうきょう) 小箱。「梵篋」とも。地中の宝を得ること。
35.金剛杵(こんごうしょ) 「独鈷杵」(とっこしょ)とも。中央に握りがあり、両端に鋭い刃の付いた武器。怨敵をくじき、鎮めること。
36.鉞斧(えっぷ) 「おの」「まさかり」のこと。役人の難を避けること。 
37.宝箭(ほうせん) 矢のこと。よき友人を得ること。   
38.胡瓶(こびょう) ペルシャ風の水差し。「宝瓶」とも。人間関係の和睦のこと。


(千手観音菩薩 三十三間堂(1001体のうち) wikipediaより)

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